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「…と、いうことだ。」
ひとまず病院を出て、Aの容態を倉元へ報告する。
仕事も一区切りついたらしく、こちらへ向かうか迷っていたようだった。
無事を伝えると、はぁ〜〜〜よかったぁ…と今世紀最大の嬉しいため息が聞こえてきて、声だけで伝わる部下達の安堵する姿に思わず笑みが浮かぶ。
が、倉元はすぐに冷静に言葉を紡いだ。
「A…戻ってこれるんスかね」
ポツリ。不安そうに揺れる声が通話口から零れる。
何より一番にAのことを考え、人の気持ちの機微もよくわかる倉元の言葉はやけに現実的だ。
「現状ではなんとも言えないな。」
「すみません。…俺、余計なこと言いました。」
「いや、…」
余計なこと、か。
そうでもないだろう、と素直に思う。
いずれ向き合わなければ行けない問題だ。
A一人ではなく、平子班全員が。
「…戻る事は、この先も戦い続ける事を意味する。
今まで通りとはいかないだろうな…」
「………それでも、…」
「………」
遠慮がちだが真っ直ぐな声に耳を傾け、次の言葉を待つ。
「それでもAは平子班の一員で、立派な喰種捜査官スから。」
「ああ。…そうだな。」
倉元にはわかっているんだろう、Aの現状と、それを知った彼女がどんな顔をして、そして決断するのかを。
俺がダメだと言っても戻りたいと駄々をこねるような、そんな気がしてきた。
だったら俺たちは立ち止まらない。
絶対に追い付いてくるだろう、あいつはそういう奴だ。
「俺たちはただ今まで通り、Aの帰る場所であればいい。」
「…間違いないっスね。」
俺も相当鍛えないとなぁー、と軽口を叩きながら
はは、と小さく笑う倉元に安心する。
それと同時に強くならなければ、守ってやりたいという想いが伝わってきた。
「Aは…麻酔も効いているし、今夜は目を覚まさないだろうと言われている。」
「まぁ、寝てる中押しかけてもアレっすよね。」
「目を覚ましたらすぐに連絡する。
今日は休め。そう、皆に伝えてくれ。」
「りょーかいっ!」
丈さんもちゃんと休んでくださいよ、の一言で電話が切れる。
すっかり暗くなった空を見上げながら、売店で何か買っていこう、とぼんやり考えていた。
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ちーかま - 伊東倉元さんめっちゃ好きです。 (2018年10月29日 20時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 無花果さん» コメントありがとうございます! 丈さんの魅力もっと詰め込みたい..ほんとに素敵ですよね!更新、時間を作って頑張りたいと思います(TT)!! (2018年5月2日 0時) (レス) id: 9c73c754f5 (このIDを非表示/違反報告)
無花果(プロフ) - 楽しく読ませてもらってます!丈さんカッコいいです泣更新頑張ってください! (2018年5月1日 2時) (レス) id: 6686156c61 (このIDを非表示/違反報告)
氷麗(プロフ) - ギオさん» コメントありがとうございます!!とっても嬉しいです… そして伊東倉元好きなお方に出会えて感激です!最高に素晴らしいですよね!魅力をうまく描けるよう頑張ります!(*´∀`) (2018年4月22日 4時) (レス) id: 9c73c754f5 (このIDを非表示/違反報告)
ギオ(プロフ) - めっちゃ面白いです!高評価とお気に入り失礼します〜伊藤倉元いいですよね!今んところ一番好きなんです! (2018年4月22日 3時) (携帯から) (レス) id: 6572e8ab81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2018年4月16日 4時