【東京喰種:re】賞味期限切れの恋【平子丈/伊東倉元】

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ひとりきりで街を歩いていると、親子連ればかりに目がいってしまう。



喰種捜査官になってからの日々はめまぐるしくて、ずっと振り返らずに走り抜けてきました。



お仕事が少しばかり億劫になってしまった時は、そそくさ〜と抜け出してしまうこともしばしばです。



そう、今日のように。









_______あ。キリンさんの形の雲です。








デパートのフリースペースでお菓子を頬張りながは、大きな窓の形に切り取られた空を見上げる。



かつての僕はあの大空に、どれだけの事を願ってきたでしょうか。



凄惨な過去。幸せとは言えなかった過去。



けれど感情を毟り取られてしまっていた僕は、何かを祈って泣いたことなんてなかったです。







_______篠原さんに、会うまでは。




それと、彼女に_______



双子だという方に、偶然遭遇するまでは。








「A、お姉ちゃん…」









…この空の下で、“お姉ちゃん”は何を思い、
何をしてきたんでしょう。



幸せだったのか。
ちゃんと愛されて生きてきたのか。



ココ最近は、そんな事を考えては悲しくなってるですね。



空から視線を外し目を伏せる…



暗い顔しちゃ、だめですね。
またはんべーに心配かけちゃいます。



僕も充分すぎるほど報われたから、歩き出さなければ。



_______と。








「あめんぼ、あかいな、あいうえお


浮藻に、こえびも、およいでる


柿の木、栗の木、かきくけこ


か、き、く。く…あー… つぎ、なんでしたっけ〜」








僕は聞いたことのない…歌でしょうか、何かを口ずさむ少女の声。



どこか気の抜けた、でもとても柔らかく楽しげな声音でした。



人の気配はしなかったのに、声はすぐ後ろから聞こえて。









「…あ、」


「ぅん、…？」







驚いて咄嗟に振り向いてしまった僕は、







「おねえ、ちゃん…」







まだ何も知らない彼女に向かって、無意識に、そう呟いてしまっていました。

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