こんにちは、お兄さん【衣更真緒】

９回目 ページ9

薬局へ行くことなどとうに忘れており、今の私の頭の中には目の前のステージのことしか考えていなかった

その後も階段の上でずっと彼等のステージに夢中になってしまっていたのだ



「みんなーーー！！ありがとーーーー！！！」



マイクを通して元気よく手を振るのはオレンジ髪のあどけない表情をした人だった

釣られて私も手を振ってしまう

あぁ、アイドルってこんなに凄いのか

茜色になった空の下で、私は放心状態だった

4人が舞台から舞台袖へ駆けて行くと見ていた女子高生達は少しずつだけど少なくなって行った



「(あ、薬局)」



まだ閉店するまで十分過ぎるほど時間はあったが、遅くなっては両親が心配する

とりあえず階段を降りて薬局の方へ早歩きをした

明日、芽衣にこのことを話すのが楽しみだな

早歩きが次第にスキップになっていく


気分が良いからちょっと奮発して高めのトリートメントでも買っちゃおうかな

いやでもまた今度カラオケ行くって約束しちゃったし…

自動ドアを通り抜けて店内に入る

もう行きなれた店舗なこともあり、いつも愛用している化粧水のコーナーまでは迷わずに行ったが問題はその後だ

トリートメントをどうしようか、でももうすぐ今使ってるのを使い切るから買い換えるなら今なんだよなぁ…

いや！でも今のままでも十分だし！！気の迷いで贅沢はダメな気がする！！！

トリートメントコーナーをなるべく見ないようにしてレジを対応してもらう

また今度、バイト代が入ったらにしよう



「ありがとうございました」



笑顔で商品を袋に詰めてくれるから店員さんにお礼を言い薬局を出た

薬局のロゴが入ったビニール袋をぶら下げて帰路を辿る



「…Aちゃん？」

１０回目→←８回目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す