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#44 ページ48
そんな事を思いながら俯く。不意に、ぴちょんっ、とスープに一滴の雫が零れる。それが、スープの表面に波紋を作って消えた。途端に、頬に熱い液体が伝う感覚と、口の中に僅かなしょっぱい味が広がった。
「！……A…？……どうした？具合でも悪いのか？」
「え……？」
「なんで、泣いてるんだ？」
「……ぁ……」
指摘されて、自分の頬を触る。指が濡れる感覚を覚えて、急いで涙を拭った。それでも、次から次へと溢れる涙は止まらなくて。
「……ぅ……ぐすっ……」
「！？……お、おい……本当に、どうした…？……A…？」
本格的に泣き出すAに、狼狽えるミケ。とりあえず、ギュッと抱き締めた。
「……ミケっ……ミケ……」
「なんだ？」
「…私……死ぬのは、怖い……」
「俺も、死ぬのは怖い。出来れば、死にたくない」
それは、Aも同じだ。出来ることなら、死にたくない。自分が、死ぬのは誰だって嫌だし、怖い。けど。
「でも……仲間が…死ぬのも……嫌……」
目の前で、仲間が死ぬのは嫌だ。死にたくないし、死なせたくない。そう訴えれば、ミケは優しく頭を撫でた。
「そうだな。俺も、死にたくないし、死なせたくない。仲間の血の匂いを嗅ぐのは、嫌だ」
でもな、と続ける。Aに、言い聞かせるように。
「俺達は、神じゃない。皆を守るのは、無理だ」
(何を、分かりきった事を。と思うかもしれない)
(それでも)
(俺は、言葉を続けた)
(Aの頭を撫でながら)
(自分と)
(Aに言い聞かせるように)
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作者名：瑚闇 | 作成日時：2020年10月22日 0時
