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着いたのは、あまり人気の無い中庭だった。風が吹く度に、サァァ…と、心地好いメロディーを奏でてくれる大きな木。その木は、丁度いい木陰も作ってくれる。下は、芝生になっていて、座っても服が汚れることは無い。
そして、人集りを好まないミケとAの、お気に入りスポットでもある。入団当初から、2人で木に寄りかかって、昼寝をしたり、話したりしていた。
芝生に座ったミケの隣に、Aも座った。少し、距離を開けて。それが、今の2人の心の距離のようで、何となく虚しくなる。
「もうそろそろ、壁外調査があるのは知ってるだろ?」
「…うん……確か…兵站拠点作りの……大規模な壁外調査…だとか……」
「あぁ」
それにあたって、2日後に会議がある。本当に兵站拠点作りなのかは、そこで分かる。古参兵なら、新兵を連れて行くという時点で、ただの兵站拠点作りだとは思ってないだろうけど。
「その前に、Aとちゃんと話をしたかった」
「……そ……そうなんだ……」
「迷惑だと思うなら、帰ってくれていい」
「そんな事無い。私も……ミケと……ちゃんと…話したかったから……」
話したかったのは事実。だけど、緊張と気まずさで逃げ出したくなる。でも、ここで逃げたら絶対後悔するから。
(明日には、屍になるかもしれない仕事)
(だからこそ)
(悔いのないように生きたい)
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作者名:瑚闇 | 作成日時:2020年10月22日 0時