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夕方。団長室の執務机の後ろの窓から、外を見る。エルヴィンは、陣形図の作成をしている。
「30日後に、兵站拠点作りの壁外遠征か……それも、今期卒業の新兵を交える…と」
「入団する新兵が居ればな」
「何れにしろ、俺には些か早急に過ぎると思えるが?」
この前の襲撃から、さほど時間は経っていない。なのに、たったの1ヶ月で壁外遠征に連れて行くなんて。普通なら、考えられない。
「エレンの現在の処遇は、あくまで一時的なものだ。可及的速やかに、彼が人類に利する存在だと、中央に示す必要がある。でなければ、いつまた憲兵団辺りが横槍を入れてくるか」
「俺にも建前を使うのか?エルヴィン」
そう言うと、エルヴィンは後ろを振り向いた。腰に手を当てて立っているミケは、目線を逸らす。その様子に、エルヴィンは、クスッと笑った。
「相変わらず鼻が利くな。ミケ」
「スン……だが、お前ほどには利かない」
「時期が来れば話す」
エルヴィンが、曖昧に返事をするのは良くある事だから、それ以上の詮索はやめた。
「ところで、ミケ」
「なんだ?」
「Aとは、仲直りしたのかい?」
ニッコリ笑顔を浮かべながら聞いてくるエルヴィンに、ギクッ、と肩が上がる。スーッと、さりげなく視線を逸らす。
「その様子だと、仲直り……いや、そもそもが目も合わせてないだろう?」
「ま、まぁな……」
(早く仲直りしないと、壁外遠征になってしまうよ?)
(……………分かってる)
(分かってないだろう)
(………)
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作者名:瑚闇 | 作成日時:2020年10月22日 0時