キスはお預け ページ12
端整な容姿にある時は冷酷な表情を映すハク。でも、今だけはきっと彼は私のもの。そして、私も彼のもの。彼に支配されている。
女の性というのか、そのことが物凄く幸せだった。
合わさった唇がやんわりと押し開けられる。ディープキスかな、と思って心の準備をした。彼の舌が口内に入ってきて、歯列の裏側を探り始めた。次にあっという間に舌を捕まえられ、蛇のように絡み付かれる。いやらしい音がした。
身体の力が抜けて快楽を感じた時、不意に彼の下が動きを止めた。不思議に思ってうっすらと瞳を開くと、ハクは私の向こうを猫のような翡翠の瞳で見据えていた。彼は私に目配せすると、頭を後ろを支えていた手を下ろし、するりと頬を撫でた。最後に私の舌先を唇でちゅっと軽く吸い上げ、それから唇と唇を離した。
何故やめたのかわからなくて、私は困惑の表情で彼を見つめた。
「ハク……? なんでやめるの? 私、ハクともっとしたい」
ハクはそれには答えず、無言で私の頭を優しく撫でた。
互いの間に繋がった銀の糸が重さに耐えきれず弛んだ。彼は親指で私の口元を拭ってから、自身にも同様に拭い、そして私の背後を睨み付けた。
「いつからそこに居た。人の恋路を覗き見るとは、大層な御趣味だな」
一瞬私に言っているのかと思った。でも、流石にそれはないと思い振り返ると、不機嫌そうな表情をした美影さんが立っていた。
「……! 美影さん!」
「神々の通る神聖な場所でこんな事するあんたが悪いでしょ。可愛い彼女に夢中で僕の気配にも気付けないなんて、饒速水 琥珀主の名も廃ったもんだね」
「湯屋の全員をドン引きさせたゲロッ吐きには言われたくないな」
ハクは笑みを浮かべているが、微笑んでいるとは思えないほど目の力が強く凄みがある。きっと物凄い怒っているんだろう。
美影さんは何故こうもハクの機嫌を悪くしてくれるのだろうか。
溜息を吐いて振り返ると、美影さんはもろに真黒な瞳でハクを睨み付けていた。2人の視線の間に、現世で見たハリー・ポッターの魔法対決のような火花が散っている気がした。
美影さんがじり、と私ににじり寄った。
「僕はAに用事があったんだよね」
「Aはそなたの用事等に割く時間はない」
ハクは私を守るように、片腕でぎゅっと私を引き寄せた。容赦なく抱き締められて、頬が彼の意外と厚い胸板に密着する。ゆったりとした心臓の鼓動が聞こえて、頬が一気に熱を持った。
私はハクの数倍ドキドキしてるというのに。
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください!m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか?お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます!笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´;ω;`)← もしかしてモデルにしてますか!? (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2014年12月28日 22時