兎に会えない ページ5
Aは網走監獄突撃の際に、気休め程度でも良いから、網走監獄の者らにAが仲間だと思わせるため、あえて看守服を着ていた。本来なら、網走監獄にたどり着くまでの道中はその必要はない。だが、Aはいちいち、先日新調してもらった軍服から看守服に着替えるのが面倒だったため、そのまま着ていたのであった。
それが幸をなしたのか、白石と会ってすぐに、Aは敵だとバレなかったのである。しかし、それももうすぐバレそうである。Aは酷く困惑した。ジトリ、と嫌な冷や汗をかいた。
｢Aちゃん。なんか、隠してない？いや、無理にいえとはいわないけどさ･･･なんか、引っかかっるんだよな･･･｣
｢あ、ああ･･･｣
｢俺の直感が告げるんだけど、それって･･･俺たちに知られたら不都合なことだったりする？｣
｢そ、そんなわけ･･･！｣
｢Aちゃん。凄い汗かいているね。なんで？今は真冬だよ？そんなに汗かくほど暑いかな？｣
｢あ、ああ･･･！｣
(も、もうダメ･･･！もう、バレちゃう！おしまいだ･･･もう、宇佐美さんにも鶴見中尉殿にも･･･みんなに会えなくなる！網走監獄で再会して、あわよくば話しをしたかった門倉部長にも･･･！その前に今バレて、白石さんたちに殺される！それしかない･･･！)
Aは、そう思った瞬間に涙がツーっと、Aの意志とは反対にツルツルと流れてきた。止めたくても止められなかった。
｢Aちゃん･･･?!｣
突然泣き出したAに、思わず白石は、先程と打って変わって慌てだした。その時だった────
｢あれ？はぐれたと思ったらこんなところにいたのか白石────って、お前！何女の子泣かせてんだよ?!｣
｢い、いや、別に泣かしたくて泣かせたわけじゃないって！｣
｢だ、だれ───って?!｣
白石に怒鳴るように声掛けた第三者に向かって、Aは首をひねらせた。そこには────
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作者名：もふもふ | 作成日時：2019年1月5日 17時
