兎のお強請り ページ19
｢その様子だと、何かピーンと来たようですね？｣
｢あ、いや、ち、違う･･･！｣
(か、門倉部長がそんなことするはずない･･･！)
Aは必死に、脳内にある考えを否定する
｢Aさん･･･｣
｢ﾋｯ･･･｣
Aは、宇佐美がいつの間にか目と鼻の先に来ていたことに驚き、短い悲鳴をあげた。しかし、宇佐美は気にせずAの耳元に吐息がかかるほど口元を寄せる。そして、Aを天国から地獄にゆっくり突き落とすように甘く囁く。
｢現実から背けてはダメですよ･･･｣
｢ッ!!｣
図星だったAは、返す言葉もなかった。
｢間違っても良いですから、Aさんの推理を教えてください。ね？｣
そういって宇佐美は、親に物を強請るような甘い声でいう。その声には、否は認めないという底知れない凄みがあった。Aは、半ば諦めながら答えることにした。宇佐美が、その考えを否定してくれることを期待しながら。
｢か、門倉部長がさっきここから走り去っていった･･･宇佐美さんの刀をもって･･･｣
｢へぇ･･･門倉部長を見たんですね！｣
宇佐美は、Aが門倉の走り去る場面だけを見たことに内心感謝した。もし、ちょっとでもタイミングが早ければ、Aと門倉が接触する。そして、宇佐美はスパイだったから故郷に帰したとかなどと、門倉に上手く誤魔化されるだろう。逆に遅ければ、門倉の姿を見ていないということで、宇佐美の件は他の誰かがやったと思うだろう。
(そしたらAさんは、永久に門倉部長との偽りの絆を信じ続ける哀れな女になっていましたね。でも、僕は運が良い･･･もうすぐ、僕が真実の愛を教えますからね･･･？)
｢それで、続きは？｣
｢そ、それは･･･か、門倉部長は看守部長だから、一部の囚人の解放の権限をも、もっていて･･･そこの2人はその権限でしか外に出れなくて･･･あ、いや、でも･･･｣
｢さて、そろそろ結論を聞かせてください。A･･･｣
そういって宇佐美はAの耳元にそっと口付ける。その甘く痺れる行為に、Aは抗うことが出来なかった。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
