山猫に一目惚れ (ページ46)

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感激ページ46

｢やはりそうか･･･尾形一等卒を想えば、自ずとその壁にぶちあたる。君のような純粋な人間が、それを無視できるわけがない。なあ、藤宮少尉･･･尾形一等卒を本気で助けたいか？｣

｢え？｣

Aは、鶴見からの突然の問いに出かかった涙が引っ込んだ。無理もない。まるで、鶴見が尾形を助けるのを協力するといわんばかりの問いなのだから。

｢それは、もちろん助けたいです！百之助さんのこと･･･愛してますから！｣

Aは、はっきりと鶴見にいった。｢愛している｣と。そういえば、Aはふつふつと心が温かくなった気がした。そこでAは漸く、自分は尾形を愛しているのだと自信を持つことが出来た。

｢ふむ。いい返事だ。ならば、彼の助けるのに協力してやろう。いや、してやろうなんておこがましいくらいだ。私は前々から、尾形一等卒を助けたいと思っていたのだから。｣

｢ほ、本当ですか？！｣

Aは、鶴見の顔をまじまじと見ていった。あの鶴見がなんの魂胆もなしにとは到底思えなかった。しかし、その目は真剣そのものだった。

｢もちろん。今までは、私にも立場があり、尾形一等卒だけを優遇するなんてことは出来なかった･･･私とあろうものが、権力に怯え、せいぜい、彼へ対する暴力を見かけたらやんわり止めるくらいしかな。だが、藤宮少尉のその想いが本物だと分かった今、本格的に動くことにしたよ。私もなりふり構ってはいられない────尾形一等卒は私の大切な部下だからな。｣

｢つ、鶴見少尉･･･!!｣

Aは、その言葉に感激のあまり目をこれでもかと開かせた。その言葉には何の魂胆も見えなかった。純粋に尾形を助けたいという気持ちだけがひしひしと伝わった。それもそうだ。何か魂胆があるときは、鶴見は甘美なる声と情報で脅すのだから。今は、それが全くなかった。

(鯉登君が鶴見少尉を尊敬するのは、こういうところがあるからなのね･･･！)

Aはそんなふうに感激し続けながら、鶴見を尊敬の眼差しでしばらく黙って見つめていた。

鶴見はそんなAを見て微笑むと、ふと顔をそむけ、医務室の窓からどこか遠くを見つめた。その顔は、どこかぼんやりしていた。

そんな常より表情のある鶴見にAは全く気づかなかった。