山猫に一目惚れ (ページ45)

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苦悩ページ45

｢もはや、それ以外に当てはまる言葉はないだろう？既に好きという感情を超えている。｣

｢そ、そうですかね･･･｣

Aは、この想いが｢愛｣なのかいまいち実感が湧かなかった。

｢そうだとも！だから、それ程想っているからこそ、君は先程廊下で尾形一等卒を助けたのだろ？｣

｢え？！何故それを･･･！｣

Aは、その言葉に思わず鶴見に聞き返す。

｢何、君が勢い良く雑巾がけをするとこをたまたま見かけたまでだ。その先にいた上等兵2人は、尾形一等卒をあまりよく思っていないからな。君が何をしようとしていたかなんてだいたい想像はつく。｣

｢見られてたんですね･･･汗｣

Aは恥ずかしさで俯く。

｢元気があって大変よろしいではないか。それに、あれならば尾形一等卒のプライドは形だけでも守れ、傷つけずに済む。しかし･･･｣

｢しかし･･･？｣

｢君は悩んでいるのだろう？このまま尾形一等卒を好き、いや、愛していいのか？｣

｢へ･･･？｣

先程の言葉となんも脈絡もない言葉をいわれ、Aは口をぽかんと開けた。そして、それは図星だった。Aは、鶴見にはいいわけは通じないと今までのやり取りではっきり分かったため、思ったことをそのまま口にする。その理由も含めてだ。鶴見は廊下での件が、尾形を想い続けて良いか迷っている理由と分かっていて、一見脈絡のない話を続けたにちがいないのだから。

｢ええ、その通りです。彼は、その生い立ちから周りによく思われていなくて、噂や冷やかしはしばしあると･･･でも、廊下であったようなあからさまな暴力を未然に防いだとはいえ、初めてみました･･･ここまでとは思わなくて･･･そして、それは先だけじゃなく、以前からあるとあのときの上等兵らの言葉で分かりました･･･彼はずっとそれに苦しんでいるのに、私ひとりではどうにもできないのが情けなくて･･･｣

Aは話しているうちに、尾形を助けることができない自分の力量不足に悲しくなっていった。その瞳は、既に涙が出る寸前だった。鶴見はそんなAを真剣な顔で見つめる。