興味 ページ35
｢あ、すみませんつい･･･それで藤宮少尉の名前は、『A』って名前ですよ。｣
｢───そうか。｣
Aか、良い名前だな･･･と尾形は小さく呟く。
そんな尾形の言葉を拾った双子は、声を上げることすら忘れ目を丸くしてた。常の尾形なら、絶対ありえない発言だからである。嫌味が入ってるならまだ彼らしいが、その声は純粋に褒めているものだった。
そんな尾形を見て、2人は顔を少し突き合わせ少し考えたのち、なにかを決意した面持ちになる。
｢なんだ･･･？｣
尾形は双子のその行動に不思議に思った。そして、双子は次の瞬間、尾形にとって思いもよらないことを口にした。
｢尾形一等卒ってもしかして･･･｣
｢藤宮少尉のこと好きなんですか？｣
｢は──?!｣
好き？なんのことだ？尾形はその言葉に思わず声を上げた。しかし、その後すぐにそれは不味かったと悟った。
｢?!尾形一等卒が分かりやすく動揺するなんて?!｣
｢これは、図星ですかッ?!｣
そう、尾形は少なからずその『好き』という言葉に心当たりがあった。それは、『彼女』───Aを思うと妙な胸騒ぎをすることだった。心臓を鷲掴みにされた感覚に陥ることもだ。だからつい、尾形は普段ならありえないほど目に見えて動揺したのだった。
｢･･･俺はただ、少しだけ興味があったから名前を聞いただけだ。｣
尾形は、なんとか Aが好きではないと否定した。その言葉に嘘はなかった。しかし、その 『興味』という言葉が、双子の意見に拍車をかけた。
｢まず、尾形一等卒が他人に興味を示すこと自体が珍しいのです。｣
｢自覚していないのですか？｣
｢鈍感ですね！なあ、浩平。｣
｢おう。意外と人間らしいとこあるんですね！なあ、洋平。｣
｢───あんな目で見つめられたらそりゃ、無視できないだろ。｣
尾形は、そう言いながらAの真っ直ぐな瞳を思い出す。そして、心の中で呟いたつもりが声に出ていたことに気づき、すぐにまた、しまったと気づく。
｢え？あんな目とはなんですか?!｣
｢もしかして、惚れたきっかけですか？教えてください！尾形一等卒！｣
｢お前らに関係ないだろ。────俺は銃の手入れで忙しいから黙れ。｣
もう、双子に色々Aについて、知られてしまった尾形はやけくそにこの話を切り上げようとする。しかし、尾形を尊敬し、必要以上に構う双子が、その程度で引き下がることは無く、仕方なしにAについて思うことを話す尾形だった。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年11月20日 21時
