山猫に一目惚れ (ページ4)

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一目惚れページ4

｢おお。これは見事！｣

その将校の声で、一瞬他所にやっていた意識を引き戻す。花沢勇作が既に銃を下ろしていたところを見るに、すでに撃ち終えたのだろう。

結論からいえば、花沢勇作が撃った弾は、射撃場の全ての的の真ん中に命中していた。

どこからともなく、拍手がおくられ、花沢勇作は照れくさそうに笑う。

｢流石、花沢少尉殿。｣

｢まさか、ここまでとは･･･恐れ入った。｣

｢花沢中将もさぞかし、鼻が高いだろう。｣

花沢勇作が、将校らのいる人だかりに向かった途端、すぐさま賞賛の言葉を受ける。

｢藤宮少尉もそう思いますでしょう？｣

｢･･････｣

｢藤宮少尉殿？｣

沈黙していたのは、何も花沢勇作に対してかける言葉が見つからなかったからではない。

ふと視界に入った彼。その彼が射撃場の前に出た瞬間、周囲はざわつく。

｢アイツは確か･･･｣

｢花沢中将の妾の･･･｣

｢花沢少尉の腹違いの兄･･･｣

でも彼が、小銃を構えた瞬間、全ての雑音が消えた。彼の獲物を逃がさんとするような強い瞳に目を奪われたからだ。

一瞬だった。構えて撃つまでの時間は、数秒にも満たなかった。
それは、的から別な的に撃つ際も同じだった。息をするように迷うことなく定め、命中させる様はとてもかっこよかった。

その間、彼に対するざわめきも、未だに止まぬ、花沢勇作への賞賛も、無音に等しかった。

彼もまた、全ての的の真ん中に弾を命中させた。それも、先に花沢勇作が撃って的にハマっていた弾を全て弾き、地面に転がして。まるで、自分の方が上だと挑発するように。

｢･･････ッ!!申し訳ございません。少し、意識が飛んでたようで。｣

彼が小銃を下ろした頃、ようやく声をかけられたことに気づき、謝罪する。

そしてまた、それが当たり前だというように自然にAの視線は彼に行く。

彼は、待機していた兵士達のところに戻る途中だったようだ。

ふと彼はA達、将校らがいる見物人のいる方を向いた。

彼と目が合ったような気がした。

すると彼はAの方を見たまま、前髪をかきあげるような動作をしながら｢フッ｣と笑った。

もう、彼に一目惚れしました。

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角刈りでも、彼は前髪をかきあげるのは癖ということで笑
次回から、ギャグ満載です！