山猫に一目惚れ (ページ13)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:111,059 hit

写真ページ13

｢なんだ？まさか、違うのか？｣

｢あ、いや･･･｣

｢どうなんだ、はっきりしろ！｣

途端に敬語が崩れ、威圧的に問い詰める鯉登に、Aはますます、歯切れが悪くなる。この状況で、鯉登の問いを否定できるほどAの精神は強くなかった。

｢なんか怪しいな貴様！先程、鶴見少尉殿はああいっておられたが･･･鶴見少尉殿を信頼する振りをして、本当はやはり、鶴見少尉殿を誑かすことが目的じゃないのかッ？！｣

｢そ、そんな訳･･･｣

Aは思わず1歩後ずさる。すると、鯉登も1歩Aのほうに近づく。また1歩、1歩･･･片や後退、片や前進。何度か繰り返した頃、トンっとAの腰に執務机が当たる。

｢え･･･汗｣

｢もう、逃げられないぞ！覚悟しろこの女狐が！｣

そういって、ドンッ！と鯉登はAの横に手をつく。その瞬間、執務机に山済みになっていた書類の何枚かがハラハラと床に落ちる。

(これが、壁ドンならぬ腰ドン?!でも、全然甘い雰囲気じゃない汗あぁ、彼だったら、どんな状況でも嬉しいけど･･･)

Aは現実逃避をするように、この状況を他人事のように考える。

｢さぁ、どう料理してくれ────ッ！こ、これは！！｣

｢･･････？｣

絶体絶命かと思われたそのとき、鯉登は急に慌て出す。そして、鯉登は執務机からあるものを手に取った。それは───

｢こ、これは鶴見少尉殿のお写真!!｣

そう、写真･･･鶴見とAが2人並んで写った写真だった。

｢あぁ、それは、入隊時に鶴見少尉に挨拶した時、記念に1枚どうかといわれて撮った写真ね･･･｣

(探してもないと思ったら、書類に紛れ込んでたのね･･･)

なくしたと知られれば、鶴見のことだ。なにをいわれるかヒヤヒヤしていたが、見つかって安心した。

｢そ、そうでしたか!!しかし、鶴見少尉殿は写真写りも実に素晴らしい！特にこの神々しい立ち姿!!｣

(ふ、普通に立っているようにしか見えないけど汗)

その後、暫く鯉登は写真に写る鶴見について、ほぼ独り言のように語っていた。

｢────これでも、まだまだ賛辞の言葉が足りない！──あ、藤宮少尉。またまた、とんだご無礼を致しました。どうか、お許しを！｣

｢ああ、いや、そんなべつに大丈夫よ･･･汗って、どうして急に謝罪？｣

何に対して鯉登が謝罪しているのか、Aにはさっぱりだった。