▽ ページ10
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「…………ごめん、そろそろ旅館行こっか」
「あ、……………はい」
既に日が沈んでしまった頃、坂田さんは私から体を離した
それを物寂しく思ってしまうのは……“そういう事”なんだろうか
ここからなら車で10分くらいだよ、早く行こう？と前を歩く坂田さんの手を握りたい、触れたい、なんて
(………………やっぱり、私はこの人に惹かれる運命でもあるんだろうか)
抱きしめられている間、ずっと考えていた
“彼は私の何処を好いていてくれて、私は……何処が好きだったんだろう”と
私の方の答えは簡単に見つかった
優しい所とか、人をさりげなく気遣う所とか、笑顔とか
声も聞いているだけで落ち着くし、お喋り上手で
─────きっと私は、また貴方に恋してる
(………たまに高鳴るこの鼓動は、貴方を………坂田さんを好きだと思い知らせてくれていた)
何だか自分の中のパーツが集められてきている気がする
欠如していた感情や表情も、少しずつ戻って来ている気がして
「───────坂田さん」
数歩前を行っていた坂田さんへ声を掛ける
“どしたん？”と優しげに微笑みかけてくる坂田さんに、私は
「……………手………繋いでも、いいですか」
勇気を出してそう言うと、坂田さんは驚いたように“え……！”と言った後、嬉しそうに微笑んで
「お手をどうぞ、姫」
なんて言って、私の手を優しく握った
好きだと自覚した途端、さっきまであまり気にも留めていなかった手の温もりが愛おしいものに変わる
“手、温かいですね”と言うと、“体温が高いんよね、冬はいいけど夏は暑いよ”と笑う坂田さん
…………そうだ
「………坂田さん、我慢しなくてもいいって言ってましたよね」
「うん？………言ったけど………何かあんの？」
「……もう少しだけ、二人で居たいです」
え、とこちらを向く坂田さんに“何だか思い出せる気がするんです”と嘘をつく
(…………ごめんなさい、ただここにまだ2人で居たいだけなんです)
こうして記憶喪失になった事を逆手に取ってこんな事をしている私は、性格が悪いのでしょうか
そんな事を考えながら、それから少しの間だけ2人で夜空を見上げていた
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ゆあ 。(プロフ) - はじめまして！今更ながら『忘 却』のお話全て読まさせて頂きました。最初から涙が出そうになるくらいしんどくて、途中からはずっと泣きっぱなしで読んでいました（笑）とても素敵な作品でした！ (2019年9月18日 12時) (
レス) id: 3af7c8b63d (このIDを非表示/違反報告)
はる@坂田家 - はじめまして！今更ながら一気に読ませていただきました！さかたんがかっこよくて、かわいくて…涙が止まりませんでした。現在、きゃろっと。さんの作品を巡回中…どの作品もすてきなので次の作品に期待しますw (2019年8月16日 22時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
みはる - 私事ですがこれを見て懐かしい先生を思い出しました。先生はガンで亡くなってしまいました。あの時1人でも不調に気が付き休ませていたら…。先生は生きていたのではないかと。私達の卒業式にも参加出来ていたのではないかと。思いました。私事ですが、この作品を読んで (2019年3月31日 0時) (レス) id: edefb05f29 (このIDを非表示/違反報告)
そら - 本当に面白かったです！素晴らしい作品をありがとうございました！ (2018年3月31日 21時) (レス) id: 8291706c49 (このIDを非表示/違反報告)
るや@坂田家 - めっちゃ号泣しました(;~;) 記憶戻ってよかったぁってなりましたww (2018年2月21日 23時) (レス) id: c71806e144 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きゃろっと。
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年8月26日 15時
