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私は目の前が滲んできた。
女を捨てたはずの私から流れてはいけない
ものが流れようとしている、

早いとこ蹴りをつけるため急いで

「誰が兄ちゃんだよ、さ、ちょっと人に
呼ばれてるから、じゃね」

と、足早に部屋に入る。

顔を歪めたはものの私の異変には気がついて
いたようで桜ちゃんはうっすら微笑みを
浮かべ私を見つめる。

先程のその視線が何故か私の胸あたりを抉る。
それが原因かは知らないけれど、
胸の辺りがぐっと抑え込まれるように
苦しくてザワザワとして、
吐き出したくても吐き出せない嫌なものが
胸の中で暴れる。

そっとしておきたいから息を整えようとして
大きく息を吸う。

そして嗚咽が始まる。
醜く苦しい音。
ひぐ、ひ、と出したくない嫌な音が口から
漏れる。それと同時に肩は上下に動き、
私は私のために整えられたベッドの上で
丸く縮こまり嗚咽を繰り返す。
その汚い音が口から何度漏れても
まだ出てこないのだ、中にある蟠りが。

私の部屋のドアを叩く音がする。

とめどなく流れ続ける涙を拭い俯きながら
ドアを少しだけ開ける。

「お、大丈夫か」

阿伏兎だ。
こいつの前では単純なバレバレな嘘など
通用することも無い、
いとも簡単に締めかけたドアを開けてしまう。

私はその押しに負けて彼を中に入れた。

「災難だったな、A」

『何、別に大したことじゃない』

「顔が全てを物語ってんだよ、
無理すんな」

そう言って阿伏兎はブラックコーヒーを
手渡す。

『待て、私はブラックコーヒー派じゃない
私はカフェオレ派だ』

「おい、今そんな展開だったか、
こういう時は黙って受け取れ」

阿伏兎が呆れたように私を見るので仕方なく
ゴクリとそれを飲む。
相変わらずの大人な苦味が口の中に広がり
思わずうぇ、と声を漏らす。

「苦いか?お子様だもんな」

『あったりまえだ、お子様舐めんな』

飲みかけのコーヒーをテーブルの上に乗せて
私はにっと笑う。

私は変わらぬ真っ暗闇ばかりが見える景色を
眺めぐい、と伸びをする。

『んー、ちょっと元気出たかも
ありがと、阿伏兎』

阿伏兎は当たり前だ、と余裕の笑み。

『阿伏兎大人だねぇ、
その顔ちょいウザイからやめれ』

阿伏兎がしていたドヤ顔を辛辣にダメ出し。

しばらくの沈黙の後不意に阿伏兎は口を
開ける。

「ここで本題だ、A、お前今日
団長の星潰しに任命されてるぞ」

ブラックコーヒーに入れている途中のミルクが
零れるのを忘れ、口がポカン、とあいた。

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アイリス(プロフ) - 続き待ってます! (2021年8月20日 21時) (レス) id: 45e9dfc0f9 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 真由さん» うぁぁ、ありがとうございます!他の表現で書こうとして諦めてそのままだった覚えがあります。気づいて報告して下さるなんてとても心優しい方ですね、違和感感じさせてしまいすみません! (2019年4月26日 21時) (レス) id: ffd4c8541f (このIDを非表示/違反報告)
真由(プロフ) - すいません。8話め 頭抱えて笑うじゃなくて腹を抱えて笑うじゃないでしょうか? (2019年4月26日 20時) (レス) id: 4fa1d4dcbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さや | 作成日時:2018年11月26日 0時

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