アルストロメリア3 (ページ12)

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「え、え、Aちゃんどうしたん？、」

「ほら、正門慌ててるから泣きやみ」

『んー、』

「なにぃ。大絶賛してたやん。何が不満なん」

『不満ていうか、なんか、……のぞむが遠い人みたいでいや、』

「なんやそれ」

『……なんか、あたしの知らん望みたいで、遠くに行っちゃったみたいで、なんか、んん、なんていうか、』

「さみしなった？」

『んー、そう、かも？終わった後にいつもの望に会えたら安心出来るかなとか思ったんやけどなあ、』

望のお芝居はほんまに、あたしなんかの言葉じゃ言い表せんぐらいにすごくて立派で。友達なんが誇らしいと思えるぐらいに素敵なお芝居しててんけど、そんな望を遠くから見てて、望がどっか遠くに行っちゃったみたいで心にぽっかり穴が開いたみたいな感覚になった。

『今までも望のお芝居ってすごいなって思ったことは何回もあったんやけど、こんな気持ちになったんは初めてかも、』

背中をさすってくれていた誠也くんの指先が降りてきて、テーブルの下できゅっと手を繋がれる。あんま外で、しかも誰かの前でそういうことする人じゃないから、びっくりして隣を見ると、なんとも言えない複雑な表情をした誠也くんと目が合った。

『せ、やくん？』

「Aちゃん？どうしたん？」

あたしと誠也くんの対面に座っている正門くんからはテーブルの下で繋がれている手なんか見えるわけなくて。突然驚いたあたしに不思議そうな顔をする正門くん。それでも誠也くんが何かを発したりするわけじゃなく、ただただ指と指を絡められたまま。

『あ、いや、なんでもない、、』

「泣いてしんどいやろ？お酒やなくてお水もらおか」

『ごめん、ありがとう』

「ううん、ええんよ」

心の内を話せて少し落ち着いた後は、普通にご飯を食べてお酒も飲んで。終電が近い正門くんとはお別れして、誠也くんと2人の帰り道。車で来てた誠也くんが送ってくれるって言うから素直に甘えることにした。

席を立ってから正門くんとお別れするまで離されていた指と指は、駐車場へ向かう道のりで再び絡められる。

「飲みすぎちゃう？」

『そんなことないよ。今日ちょっとしか飲んでへんもん』

「……しばらく外で飲むん禁止しよかな」

『え、それだけはご勘弁を』

いくら夜遅くて人気がないとは言え、外で手を繋ぐのはリスクが高すぎて離そうとするけど、力強く握られたその手は結局、車に乗り込んだ後も離してくれることはなかった。