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『手、離さな運転できひんよ？』
「ん、」
渋々、といった感じで離されたその手に残った体温に、少し寂しさを感じてしまったのは事実。
車が動き出して数分後、今日の感想を望に送ろうとスマホを触っていると、再び誠也くんの手が伸びてきて無理やり絡め取られた。
『誠也くん？ほんまに今日どうしたん？』
「………小瀧ばっかやん、」
『え、？』
「今日、小瀧の話しかしてへん。わかるで、確かに凄かったし。でも、そんなに他の男のこと褒めてたら誰だって腹立つやん。しまいには寂しいとか言うて泣き出すし」
『だっ、て事実やし。望が遠くにいっちゃったみたいで嫌やってんもん』
「だから、それやん。Aの彼氏は俺やろ。一番近くにおんのは俺やん。他の男のこと思って泣くなや」
あからさまな誠也くんの嫉妬が嬉しくて、申し訳ないけどニヤニヤが抑えきれず小さく笑みが零れた。
『ふふ、誠也くんが妬いてる(笑)』
「おい、お前なあ。こっちは真剣やねんぞ」
『んは、ごめん(笑)』
「思ってへんやろ？」
『思ってるよ、ごめん(笑)』
怒ってる誠也くんにはほんまに申し訳ないけど、こんなに嫉妬してくれてたらニヤけるの抑えろって言う方が無理やと思う。
小さく舌打ちをした誠也くんはため息をひとつ吐くと、走らせていた車を端に寄せて路肩に停めた。あ、やば、やりすぎた。本気で怒らせた。
『……ごめん、調子に乗りすぎました、』
「ようわかってるやん」
『だって……、』
「だってなんやねん」
『そこまで本気で妬いてくれるの珍しくて嬉しかってんもん……』
言いながら、なんか自意識過剰ちゃう？とかいろんな思いが駆け巡って段々小さく消えていく声に、また誠也くんのため息が重なる。
「嫉妬なんか常にしとうわ」
『へ？』
「俺がどんだけAのこと好きで好きでたまらんかわかってないやろ？」
『ぇ、いや、え、？』
「A、友達多いしいろんな奴に目付けられとうし、今日なんか小瀧に廉に大吾てどんだけ他の男の名前出てくんねん。なんなん？わざとなん？」
『え！？わざとじゃないです…、！』
「これかっこ悪いからほんまは言いたなかってんけど、……いつか誰かに取られるんちゃうかって毎日不安やねん。最初はかわいいだけやったのに、最近会うたんびに綺麗になっていくねんもん、お前」
『へ、？』
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作者名：てと | 作成日時：2023年1月29日 17時
