2. ページ28
試合展開は私の予想とは、遥かに違った。
秀徳の緑間が得点を決めるのは想定内、むしろそうだろうと思っていた。
しかし、その次のプレーが私や、場内の観客をどよめかせた。
誠凛のちっこいのがエンドラインから、長距離パスを放つ。
それを有望株が受取り、そのままシュート。
場内が歓声で溢れかえった。
「...何、今のプレー。」
あのシュートも予想以上だったが、問題はあのパスだ。
あんなパスをする選手がいたことに何故私は今まで気づいていなかったのだろうか。
みたところ、目を惹くような体格でもない。
だからだろうか。さっきまで、いたということすら私は分からなかった。
しかし、誠凛の勢いはそこまでだった。
マークが変わった途端、パスが通らずどんどん点差が開いていった。
ここまでになると、勝敗は決まったようなものだろう。
「真、私もう帰っていい?」
「...ま、もういいだろ。俺達も帰るぞ。」
珍しく真が折れた。
いつもなら、こんなこといったら怒るのに。
さすがに、勝負の結果を悟ったのだろうか。
私達は結局、最後まで試合を見ずに帰った。
解剖までは出来ていなくてもある程度の情報は得ることが出来た。
有望株君と、あのパスの子。
二人共見たことの無い感じのあたり、一年生なのだろう。
「...今度、情報収集がてら誠凛に行ってみようかな。」
小さくそんなことを呟くも、その声は風に流される。
私達が暢気に帰っているとき、試合の展開は大きく動いていた。
でもそんなこと、私達は知らない。
知る由も無かった。
43人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ