3. ページ20
部活が休みと言われ、帰るのも暇だからスポーツ店に向かっていた。
勿論、真を連れて。
部活で使うものもろくに補充していないのだろう。
この機会に揃えたいものは揃えておく。
「ちっ...」
とうの真本人は未だに不機嫌だけれど。
私が連れ出したのと、今吉先輩のことを話したのと。
その二つで余計に苛々しているのだろう。
小さい溜息をつく。
ふと顔を上げると、交差点の向かい側に見知った顔があった。
でも私は直ぐに目を逸らした。てか絶対合わせたくない。
よりによってなぜ今、会うのだろうか。
私達のことを素通りしてくれるのを願って歩いていく。
こんな願い、叶うはずないのに。
「おお、Aに花宮やないか!」
「げっ。」
私と真は揃って声を出す。
この人は嫌がるのを分かって声をかけたのだろうか。
相変わらずの性格の悪さだ、ほんと。
「なんや、揃いも揃って。」
「いえ、ただ部活が休みなので少し買い物に行こうと思って。」
「そうか。で、なんでお前は霧崎の制服なんや。」
「いや、まあ、転校したので。」
早くこの人との会話を終わらせたい。
そのためには強行突破しかないと思い、私は直ぐに足を踏み出した。
まあ勿論そんなので離してくれる先輩な訳が無く。
あっさり足止めをくらった。もうやだ。
「ほお?でも、なんで霧崎にしたんや?他のとこでも良かったんとちゃうんか?」
「...なんでもいいじゃないですか。」
「なんや、やっぱ自分花宮に気が」
「無いですから!」
なんで私はこう何度も同じことを言われなければいけないのだろうか。
真は幼馴染だ。しっかも、こんな性悪に惚れるはずが無い。
てか、さっきからその真が静かだ。
ちらと視線を向けると、居たはずの真がいない。
え、いないって。なんで。
...あいつ、押し付けて自分は逃げたな!?
向こう側へ眼を向けると真がニヤニヤしながらこっちを見ていた。
後でシメていい?
「ま、ええわ。試合で当たったときはお手柔らかにな。ほな。」
そういって今吉先輩は立ち去った。
出来れば試合でなんて当たりたくないものだ。
また私は溜息をついた。
そして駆け足で真の方へと向かった。
一発の跳び蹴りをプレゼントし、その後何も無かったかのように買い物をした。
43人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ