太宰幹部の包帯事情２【太宰治】 (ページ31)

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カルテ６５枚目【賞賛】ページ31

誰もいない廃墟の、崩れた壁から漏れる光だけが僕を照らしていて、ボロボロになって薄汚れてた鏡に映った僕は、ひどい姿で、人間であることを疑った。確かに形は人のそれだけど、それでも、自分の内部に人間まがいが含まれている気がしたんだ。

それから、あの医者の男……まぁ森さんなんだけど。森さんに見つかって保護された。
殺された男の死体はバラバラで判別が難しい状態だったらしい。辻村さんの姿だけは見えなくて、殺しちゃったのか、生かしたのかわからないんだけど、なんとなく殺してない気がするんだ。

森さんに拾われて、医療関係のことを本格的に教えてもらって、マフィアに入れてもらった。
彼此もう何年経つか……わかんないけど、森さんにはすっごく感謝してる。

話を戻して考えるけど、僕の異能の暴走は記憶にある。記憶の中の自分がいつだって泣いてるんだけど、分かってるんだ。

暴走は意図的に起こしているんだって。

なんとなくだけど、まだ心配されたいんだと思う。被害妄想に通じる思いが拭えてないから時々子供の自分を誰かに守ってもらいたくて、それか見つけて欲しくて、こうして暴走させてるんだ。
分かってはいても制御が今の所効かないから理解したところでって感じなんだけどね。

さて、これが僕の過去の一部。
一番深くておどろおどろしい記憶。
これが聞きたかったんだろうけど、君はどう思った？【最年少幹部様】

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僕の過去について話し終えて【最年少幹部様】を見つめる。暗い顔で僕の手を軽く握っている。泣きそう、ではないのだろうけどやっぱり黒に染まりきれてない。心配の色が瞳から見える。

「……なんて、返したらいいか」

『思ったことを言っていいんだよ。
へぇ、とか、どうでもいい、とか、自業自得、とか』

例えを出すと食い気味で答えた。

「頑張ったんだなぁって、思います」

『……頑張った、ねぇ。あんまり頑張ってないけどね』

軽く笑って返すと僕にゆっくり腕を絡ませてきてそっと抱きしめた。あったかい。
気づかれた。温もりが。怖い。心地よい。

「頑張った、と思いますよ？
自分のことを知るのも、こうして話すのも、勇気がいるから……」

頭を軽く撫でてあやすように甘い声で話しかけてくれる。満たされる感覚。

嗚呼、幸せだ。

そう自然に思える温もりに、今はすごく甘えていたくなった。