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小噺ー店名の秘密ー ページ10

焦げ茶になって来たような気がする扉を開け、小さな鈴の音を今日も聞く。
ここ数日、私は、この店を気に入ってる。




『いらっしゃいませ』




「やぁ、また来たよ」




『あらあら、お仕事は?』



「今は休憩中」





実は仕事をサボって来たけど、休憩中ってことならこの人も怒らないし、困ったりしない。
目の前で微笑みかけた美しい女性は、ここ、カフェDCのオーナー。
珈琲や紅茶が美味しく、料理も好みだ。
宴会向きではないことが残念だが、少しの休憩には最適だと思う。





「ねぇ、ここのカフェの名前って、なんであんなに面白い名前をしてるんだい?」





珈琲に砂糖をひとつとミルクを二ついれてかき混ぜた甘めの珈琲。
ブラックも飲めるけど、今は断然この気分だし、オーナーがいれた珈琲はこれが一番美味しい気がする。まぁ、まだ他のものを頼んだことないけど。





『名前?カフェDCのことですか?』




「そう。その、DCとはなんだい?何か思い入れがあるとかなら、無理には聞かないが……」




『いえいえ、そんなのではございませんから。いいですよ、太宰様。教えてあげます』






しーっ、と指を唇に当てて片目を閉じてそっと囁く。見た目に反した可愛らしい内面は私の心を躍らせた。頼んだら一緒に死んでくれそうだから。






『Different capacity』





発音よく呟いた。
意味がうまく掴めない。異なる、うつわ?
…………もしかして





「『異能力』」





声が被って二人で顔を見合わせて笑った。はい、とオーナーが言って、一冊の本とレコードを持って来た。片方は悲惨な失格録。もう片方は過去にとらわれる男の前向きな曲。
どちらも読んで、聞いて、共感して泣いたものだ。






『この店では、異能力を売っています。
否、売ってると言ってもお金をもらうわけではなく、本当に力が欲しいという人のために提供しているんです』




「提供?異能力を提供するなんて面白いことを考えるね」





『私の異能力がそんな感じの力ですので。何かに活かせないかと考えた結果です。
その後、どんな展開になったのかは私の知り得ることではありませんし、介入するつもりもありません。全てはその人の人生で、私の駒ではありませんもの』





どことなく宗教的な彼女の言葉。
珈琲を一口飲もうとして、なくなっていたことに気づいた。いつのまに。






『ふふっ、もう一杯、どうですか?』





彼女は、甘さを立ちのぼらせた。

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四月一日(プロフ) - NamE.薆さん» ありがとうございます! (2017年12月31日 7時) (レス) id: ecd8b49d96 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 四月一日さん» かしこまりました!この小説の続編の方に書かせていただきますのでご覧ください。 (2017年12月30日 23時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
四月一日(プロフ) - NamE.薆さん» あ、そうでしたか。では、似たような異能をお願いします! (2017年12月30日 12時) (レス) id: ecd8b49d96 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 薬研清香さん» 申し訳ありません。他の方からのリクエストなので、使用を許可できません。似たような異能をご希望ならお作りしますが、どうでしょうか (2017年12月30日 12時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
薬研清香(プロフ) - 37頁のクレヨンを使わせて頂いてもよろしいでしょうか? (2017年12月30日 9時) (レス) id: ecd8b49d96 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年10月1日 21時

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