第陸話 死相を決す者 ページ8
「おや、そちらの麗しいお方は?」
「京極さん、お前を助けた人だ。無礼のないように」
急に音もなく太宰さんが私の前に跪いた。
そして私の手を取って、凛々しく顔を上げた。
「お美しいっ!!ぜひ、私と心中……『ごめんなさい』
凛々しい顔して、何を言いだすかと思えば。
共に死ねと?
はっ、ふざけないでいただきたい。
「人間風情が、何をほざくかと思えば」
『こら』
オサムの足を思いっきり踏みながら、また微笑んだ。足元に蹲るオサムを放っておきながら、太宰さんに向き直って告げた。
『私はもう、現世での死に方を決めておりますので』
微笑みながらいうと、太宰さんが残念そうに、然し、まだ諦めていないように目を光らせ、「これは失礼」と立ち上がった。
「無礼のないようにと言ったばかりであろう!?」
「わー!国木田君が怒ったー!!」
何だか騒がしくなりながら、医務室を出た。
現在8時少し前。
開店時間までまだ余裕があった。
『あ、オサム。あのバイト君はもう来たの?』
「もう来てたから上で仕事させてる」
『バイト君だけで?はぁ、あんた、其れでも先輩なの?ちゃんと後輩の面倒見たりだとか、教えてあげたりすることもたくさんあるでしょう?』
「わかってるよ。でも、君を一人にしたくなくて」
悲しい顔で言わないでよ。
何だか、私がすんごく厳しいみたいじゃない。
これって、厳しくないよね?
大丈夫だよね?
『ん?待って。今日って月曜よね?てことは、リュウ君いるのよね?』
「いるよ。………………あ」
……………やばい。
私の店が開店前からぶっ壊れる!!!
『すみません!急用ができて、これで失礼します!!!』
「え!?あ、はい!」
敦君が何となくで頷く。
太宰さんはまだ国木田さんに怒られているようだ。
『よかったら12時に来てください!!下の階ですのでーー!!!』
扉を開けながら敦君に手を振った。
オサムを軽く引っ張りながら急いで三階へ戻る。
このままじゃ、マジでやばい!!
ーーーーー
ーーー
ーー
ー
「これは此処か?」
「違うって言ってるだろ!?それは此処だ!」
「小さいことでキリキリするな。猫化妖怪めが」
「なに!?この、真っ黒黒助!!!」
「その名で呼ぶなと何度言えば分かるか!!」
『喧嘩禁止ーー!!!』
間に合った、か?
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年8月22日 21時