ひと匙の幸せ【衣更真緒】

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「 …ちょっと、どいてくれない？ 」





屋上に行きたいのに、階段の踊り場にはアイドルらしからぬ格好の−−−所謂 不良がたむろっていた。

ど、どうしよう〜だなんて怖がるか弱い女の子でもないので、腕を組んで彼らの前に仁王立ちした。





「 あ？ なんだよお前。女？ 」

「 ていうか、今 授業中でしょ？ こんな所で無駄な時間 過ごしてないでやる事あるんじゃない？ でないと、腐るほどいるアイドルの中でも腐ったアイドルに成り下がるよ 」





男のうちの一人が立ち上がる。

先程の言葉に腸が煮えくり返るほどの感性は持ち合わせているようで、彼らも根本はアイドルなのだということが分かる。

とはいえ、今の状況は少しまずいかもしれない。





「 お前こそ、このアイドル科に堂々と不法侵入か？ 生徒会に突き出してやろうか。あ？ 」

「 お生憎、私は許可を得てここに来ているの。ほら、屋上に行きたいからどいてくれない？ 」





至近距離でこちらを見下す男を、負けじと下から睨みつけてやると、バタバタと慌ただしい足音が聞こえてきた。

なんだろう、嫌な予感がする。





「 つ〜き〜し〜ろ〜！！ 」

「 うげぇ、出た 」

「 おま、お前ってやつはなぁ！ あぁ、もう！ 」




衣更は私の手首を掴むと、先輩であろう不良たちに「 すいません！ 」とだけ声をかけると階段をかけおりた。

もちろん彼に掴まれている私もよろめきながらも階段を下りて、そのまま廊下を引きずられるように走る。





「 ちょ、衣更！ 何、離してよ！ 」





声を上げたけど、衣更は止まってはくれなかった。





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