【鬼滅の刃】存在がうるさい。

52 ページ5

・





密かに立てようとしていた逃亡計画が宇髄天元によって粉砕されていることが分かった次の日の昼。

昼飯を食べ終え、訓練を再開するまでの間の時間、1人でぼーっと庭園を眺めていた。多分顔死んでる。

脳内は金、金、金である。

やっと安定して稼げる場所で働けそうだったのに。無意識に溜息が出た。もうこれで本日何回目だろうか。

14歳の私が言うのもなんだが、人生ってすごい面倒臭い。





『(半ば弟を見捨てて逃げるように家出してきた私は正解だったんだろうか)』





家族の中で、唯一殺しを躊躇っていた弟。父さんや兄ちゃんからどれだけ出来損ないって言われようと躊躇っていた。

本当に優しい子だった。人を殺すことに関心はなく、ただ褒められるだけにそれを行っていた私とはまるで違う。



私は嫌なことから逃げてきただけであって、特にやりたいことも好きなことも見い出せない。

そして今までいろんな人にお世話になってきた……利用してきたけれど、暗殺時代と変わらず常に警戒しなきゃいけない窮屈な毎日だった。

いつ殺されるか分からなかったし、私は利用するけど相手に利用されるのはたまったもんじゃない。

これぞクズの思考。





『もうまともな生き方なんてできないんだろうなあ』





私の呟きは誰にも拾われることなく宙に消えていく。

しばらくぼーっとしていれば、後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。

それに振り向くと、木刀を肩に担ぐ宇髄天元がこちらへ向かって来ていた。





｢再開するぞ｣

『はぁ……』

｢人の顔見て溜息つくなっての。ほれ、次はこの木刀な｣





ぽいっと昨日同様投げるように渡され、片手で受け取ろうとした私は失敗した。

予想していなかった重さに目を見開いて驚く。





『お、っも！！』

｢昨日のやつの2倍の重さだ｣

『急に2倍にするとかふざけてんの』

｢とっとと始めるぞ｣

『泣いた』





そんな訳で、今日も今日とて訓練が(強制)が始まるのだった。いつか逃げ出してやる！と心に誓った。





・

53→←51

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す