花には水を、人には人を妖に＿＿＿? 2 (ページ44)

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８４話さよなら半妖ページ44

一松side

妖怪神「そろそろ時間だぞ…もう大丈夫か」

狐優紀「もとより覚悟はできております」

狐優紀は、羽実果とこちらに笑いかけると妖怪神を見据える。

あぁ、本当にこれで終わりなんだ。
今の二人にはもう会えなくなるんだ。

僕達の元を離れた二人の手を僕達の中の誰もつかむことは出来ずに、動くことが出来ずに立ちすくむ。

お「……っ狐優紀!!羽実果!!」

妖怪神がレバーを引く直前になっておそ松兄さんが二人に呼びかける。

その声が聞こえたのか、二人は目を丸くしてこちらを振り返った。

お「絶対忘れんなよ!!約束だからな!!」

チ「んな無茶なッ!!」

おそ松兄さんの少々無茶だと思われる約束。
二人は苦笑いしながらこくりと頷く。

妖怪神はそれを見届けたあとレバーを引いた。

目もくらむような眩い光の後、そこに残されていたのは、誰もいない舞台と見物人の妖怪、その中にいて、気づかれないように涙を流す妖怪神だけ。

半妖という理由で長い間一人きりだった二人、家族に加わった二人、助けてくれた二人、そんな二人の長い長い半妖人生は今、処罰という名の転生で幕を閉じた。

舞台の上には髪飾りと魚の鱗だけが残されていた。