宇井 郡・短編集 【東京喰種】

バレンタイン ページ1

2月14日

まだ寒さが残るこの時期
東京はカップルがいちゃいちゃ
未だ独身で、恋人もいない私には無関係の今日。

だが、私だって思いを寄せている人くらいいる。
同じ喰種捜査官として働いている “水無月 A”

一緒に行動したことも無ければ、話した事もない。
すれ違いざまに私がじっと見ているだけ。

ため息をつきながら自分の持ち場につく。


ﾊｲﾙ ｢郡先輩、おはよーございます｣

｢あぁ、おはよう｣


さっそく隣でポッキーを食べているハイル
よく見るとパッケージにはメッセージ入り
青いストーンだったり、リボンだったり。


｢ハイル、それ誰かから貰ったの?｣

ﾊｲﾙ 「Aちゃんからです。綺麗な青ですよねー。しかもポッキー手作り｣


常に青い何かを身に付けているA
前は青いピンだったような……


ﾊｲﾙ ｢そういえば、郡先輩も貰ってきたらどうです?Aちゃん、チョコを皆に配ってるんよ｣

｢そういうのは “欲しい” って言って
貰うものじゃないでしょ?｣

ﾊｲﾙ ｢Aちゃーん、郡先輩がチョコ欲しいって｣

｢言ってないよ!!｣


小走りでこちらに向かってくる。
貰えるのかな、と期待してみたが


｢すみません……すでに無くなってしまって……!!｣


辺りを見回すと全員がお菓子を持っている。
まさか、男として数えられてない…!?
義理ではなく友チョコ感覚か……!?

ペコペコと謝り、去っていった。


ﾊｲﾙ ｢残念でしたねぇ……｣


そんなハイルの言葉を右から左へ流し、
机の上に上がっている書類に手をつけた。

────────────


｢運悪いなぁ……せっかく貰えるチャンスだったのに｣


屋上でひと休み。
空にのぼっていく煙を見てた。

あの時、Aの首元に光る物が見えた。
それはネックレス。
青いダイヤが小さくついていて、
彼女の魅力をさらに引き立てていた。


｢そんなに欲しかったですか?手作りお菓子｣

｢うわあぁぁっ……!!!｣


隣から聞こえてきた好きな人の声。
誰もいなかったはずの屋上に
人がいた事にも驚くが、
それが好きな人だったから尚更驚く。

さっきの独り言を聞かれてたらしい。


｢ちょうど切れちゃったんですよね……タケさんで……｣

｢いや、気にしなくてもいいよ｣


本当は欲しいくせに、なに格好つけてるんだ私。


｢……嘘です｣

｢……なにが?｣


彼女が嘘の答えを言う前に、その嘘が分かった。

彼女の手にはチョコがのっていたから。

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