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第伍拾漆戦 手掛かり ページ10

先程 長谷部を追った際、離れに行こうとしていたのが気になった。きっと何か手掛かりになるのではないか、と目星を付けていた。

「長門君、僕らは何をすれば良いかな?」

「そうですね。光忠さん含む、皆さんはここで待機です。一度に物事を進めても、私が疲れるので……」

「頑張れ、総監督」

詰め込み作業となると、役割を与えられて動く方は楽だ。だが、全ての動きを総括する現場監督ほど辛い仕事は無い。
また山姥切には古参の彼らとコミュニケーションをなるべく多く取らせ、自分やこんのすけ、担当の架け橋になって欲しいと思っている。

「それじゃ、行くか。長谷部はいつもあの離れに居る。前任からあの場所に居るよう、きつく言い付けられていたからな」

「ほう……災難ですね。あの男も多少は頭が回るようで」

「俺たちからすれば、きみの方が怖ろしい」

鶴丸と共に離れに向かう。その間、長門は前任が何故、長谷部を離れに置いていたかを考えていた。
長谷部が自ら前任の許に下ったなら、傍に置いておけば良いものを。そうしなかったのは、長谷部が諦めていないと理解していたから。
長谷部が、かの老人の仇討をするのではないかと懼れていたのだろう。

つまり、長谷部は専ら手討ちをする為にあの男の懐に居た。
そしてその復讐は、長門が前任を引き摺り下ろした時点で御釈迦となった。長谷部の目的は達成されていないのだ。

「こう言っちゃ何だがな。長谷部からすれば、きみは復讐の邪魔者だ」

「わかってます。でも悪いとは思っていませんので」

「俺たちの復讐は駄目で、きみの報復は許されると?」

相変わらず悪びれない審神者に、鶴丸の視線が刺さる。先程は加州に報復を教唆していたではないか。そう鶴丸は思うが、彼が何を考えているかわかったものではない。

何よりも戦に例えた意志疎通に、心底驚かされた。こんのすけや政府では、彼を抑えるのは不可能だとハッキリしたから。
とはいえ、この青年の目的は、乗っ取りでないのは明らか。考えは読めないが、行動で示す辺りは信頼できる。

「私個人の野心ならば、貴方たち付喪神で対処出来るでしょう?契約も結んでいない人間を殺すなど、造作もない。しかし貴方がたを私が抑えるのは不可能に近い」

この意味がわかるか、と軍服を纏う審神者は鶴丸に、目で問うた。

「きみはただの軍人ではないな、何者だ?その歳でこれだけ理解するなんざ、恐ろしい以外の言葉は出んぞ?」

「昭和初期から退役軍人のジジイですよ」

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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか!私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね?現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます!(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料?とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて・・・ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません;; (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ!退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大日戦 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880  
作成日時:2016年12月18日 22時

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