第伍拾捌戦 名誉挽回 ページ11
やや呆れたように返す長門に、鶴丸は怪訝な表情で顧みる。しかし、爺ならなぜ若い姿のままなのか、そこが疑問である。
童顔低身長だから若く見えるのか、それともまた別の理由があるのか、如何せん彼は謎が多い。
「きみは仙人か？幾つだ？」
「……説明が面倒になってきた。……解釈はご自由になさって下さい」
こればっかりは疲れると言いたげに、長門はさっさと離れに向かう。鶴丸はその背を眺めながら、終始首を捻っていた。
◆◇◆
鶴丸と共に、長門は長谷部が居るであろう離れの入り口の引き戸に手を掛けると、背後から冷淡な声が降りかかる。
「何が目的だ？下手な事を言えば、圧し斬るぞ」
「……へし切長谷部さん、貴方にお話しがあります」
「話す事は何も無い。悪い事は言わん。ここから離れろ」
長門の背後に立ち、長谷部はその背に鞘から抜いた白刃を突き付ける。刃を向けられて尚、長門は長谷部に抵抗をせず、敵意を見せない。代わりに両手を上げ、降伏の意思を見せた。
「そこまでだ、長谷部。この人は本当にお前と話がしたいだけだ。本体を収めろ。もう前任は居ない、そこまで警戒する必要はない」
鶴丸が長谷部の腕を掴み、長門を庇うように二人の間に入る。流石に鶴丸に刃を向ける訳にもいかず、長谷部は渋々刃を下ろすが、鞘には納めない。
ようやく話が出来るようになり、長門は長谷部に向き直った。彼は、一応視線は合わせるが、その眼には殺気が滲んでいる。
「(彼には、回りくどい話は通じそうにないですね……致し方なし)」
巡ってきた機会を無駄には出来ない。信用して貰えなくとも、彼を生き長らえさせる術は見出している。ある種の賭けだった。
「長谷部さん。貴方の主の名誉を挽回したいのならば、私に力を貸して下さい」
単刀直入。その通り、長門の目的は明確だった。鶴丸や光忠、長谷部の前の主に報いたければ、この本丸に留まれ。逃げるな、前任から逃げるな。戦え、生きて気が済むまで報復しろ。
そう長門は、八ッ橋に包んだまま一言で訴えかけた。前任に報復したければ、自分の傘下に収まれ。それが、長門の持ちかけた等価交換と言える“賭け”だった。
自分には彼らの求める居場所を与えられそうにない。だから長門に任せず、自分で掴んでみせろと。
「…………」
「……ふっ……あっははははははは！」
勿論、突然の事で長谷部は唖然とする隣で、鶴丸は何を思ったのか、吹き出した。
「やれやれ、……そういう事か。やはりきみは恐ろしいな」
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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか！私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (
レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね？現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます！(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料？とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて･･･ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません；； (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ！退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：大日戦 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880
作成日時：2016年12月18日 22時
