第玖拾肆戦 調弦 ページ47
「山姥切との事もあるから余計にだろう……？」
朝っぱらから山姥切と揉め事(８割方自己責任)を起こして以来、全く会話を交わしていない。鶴丸に痛いところを突かれ、バツが悪そうに長門は更に俯く。
「山姥切はきみのことが心配なんだ。きみを心配してくれるヤツが居るだけ有難いと思った方が良いぜ」
琴線をもう一度弾くと、鶴丸は徐に入口の方を顧みた。釣られて長門も顧みると、黒髪の青年が離れの入り口に立っている。
「どうした光坊、夕餉の相談か？」
「あ……いや、おやつにずんだ餅作ったんだけど……食べるかい？」
何時の間にかそこにいた光忠に若干肝を抜かれたが、長門は顔には全く出さなかった。軍服の胸ポケットに入れていた古い懐中時計を見ると、長針は既に昼の１１時を回り、太陽は南の空へ上り詰めていた。
「ゴメンね、盗み聞きとかするつもり無かったんだけど……」
「いえ、別に気にしてませんから」
「さて長門、辛気臭い話はここまでにして茶でも飲もう。光坊の茶菓子は美味いぞ」
自分よりも遙かに長身のくせに、縮こまった子犬のように恐る恐る主の表情を伺う光忠を見ていると、すっかり毒を抜かれ、笑いが込み上げてくる。
�豐櫃楼貘�早く離れを出ると、確かな足取りで本宅の方へ戻っていく。彼は意外にも甘いもの好きらしい。
「……どうかしたの？」
ぼんやりと�豐櫃�奏でていた琴に目を向ける長門に、光忠は怪訝な表情で顧みる。
「あの琴、調弦しないといけませんね……」
「あぁ、鶴さんの琴……。もう何年も調弦してないから、弦が緩んでるんだ。てっきり前任に捨てられたのかと思ってたよ」
琴線が緩み、本来の音色とは少し離れているように感じたのは気の所為ではなった。
光忠に茶を飲みながら話そうと勧められ、鶴丸の古い琴を一瞥すると、長門は離れを後にする。本宅に戻ると、粟田口の短刀たちが駆け寄ってくる。
「主さん、一緒におやつ食べよ！」
「積極的ですねぇ……」
乱にぐいぐいと背中を押され、言われるがままに粟田口の短刀部屋にお邪魔する。光忠にずんだ餅とお茶を淹れて貰い、ようやくひと心地つかせた。
まだ話した事の無い短刀も多く、少しでも距離を縮められたらと思っているので、乱の誘いは結果オーライだろう。
後から後藤藤四郎、信濃藤四郎は比較的レアな短刀だとこんのすけから告げられた時は、どう反応するべきか悩まされた。
こうして何とか本来の付喪神としての姿を取り戻せただけ、良かったのかもしれない。
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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか！私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (
レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね？現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます！(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料？とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて･･･ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません；； (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ！退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：大日戦 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880
作成日時：2016年12月18日 22時
