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第漆拾弐戦 地雷 ページ26

口では何だかんだ言いつつ、面倒見は良い。先程まで賑やかに騒いでいた短刀たちも眠くなってきたのだろう。
大広間は少し静かになってきた。鳴狐や鯰尾、薬研が毛布を取って来て寝落ちた小夜や兄弟へと掛けてやっている。

「長門君、もう良いの?」

「私はそこまで強くないですし、十分頂いたので」

二次会の様に盛り上がり始めた広間を見て、長門はするりと宴の輪から抜ける。料理の乗っていた皿や酒の瓶を片付けに入った。
山姥切は三日月との飲み比べに完敗し、既に酔い潰れて鶴丸と共に爆睡している。長門の見解では、人の身を得た直後でも一時間は酔い潰れずに飲めたので十分蟒蛇というオチがついた。

「手伝うよ」

「光忠さんは、皆さんと飲んでらして大丈夫ですよ?」

「君だけに任せるのは、申し訳ないよ」

「……ありがとうございます」

結局光忠の好意に甘え、片付けを手伝って貰うことにした。一人でやるよりも、人手が多い方が助かることは事実である。

「長門君、鶴さんが迷惑掛けたね。あれでも悪い人じゃないんだ」

「分かっていますよ。あの程度のすきんしっぷなら、許容範囲ですから」

「うん……。なら、良いんだけど」

長門の許容範囲が気になったが、地雷を踏みそうで、言葉を呑み込んだ。下手な事は言わない方が良い。主は弱音は決して吐こうとしないが、時折思い詰めた表情をする事がある。無意識なのかは分からないが、少し無理をしているのではないかと思う。

光忠は、手入れをして貰う前、長門を強いと言った。だが彼は首を振って否定した。自分は褒められるような事は何一つしていない。教え子たちを死地に向かわせたのに、自分は生き残った。どうして替わってやれなかったのか。守れなかったのか。

自身を責める口調は何処か受動的で、自分を顧みているように見えなかった。自身の事でありながら、他人目線で自分を責めていた。どうしてやれば良いのか。主をどう支えれば良いのか。距離感を掴むには時間が掛かりそうだ。

「……光忠さん?どうされました?」

「え…?あっゴメン!何でもないよ!」

黙っていれば顔立ちにあどけなさを残す長門の横顔を暫く無意識に眺めていたようで、怪訝な表情でこちらを見上げる主から、光忠は慌てて目を逸らす。
片付けも終わりを見せた頃、酔いが醒めた山姥切が厨房に姿を現した。

「長門!来てくれ!」

「はい?どうされました?」

珍しく自分を急かしてくる山姥切に、長門は首を傾げつつ片付けを光忠に任せる。

漆拾参戦 一喝→←第漆拾壱戦 無礼講



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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか!私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね?現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます!(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料?とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて・・・ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません;; (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ!退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大日戦 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880  
作成日時:2016年12月18日 22時

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