苛立ち―3 ページ4
すっかりと日が暮れてしまったが、まだまだ夜は長い。
現在20時。
ビルとビルの間の深い闇に包まれた路地裏の世界で一人の男が薄暗い明かりを灯していた。
スマートフォンから漏れる明かりが男の顔を浮かび上がらせて恐ろしくも見える。
「…あぁ、可愛かったなぁ」
ほぅ、と息を漏らして男は画面を穴が空くのではないかと思うぐらいに見つめていた。
その男の様子は愛しい人を見る目のようでもある。
しかし、男は異常だろう。
…男の携帯電話に写し出されている例の“彼女”の写真は全て隠し撮った物だからだ。
男の経歴は普通よりも明らかに逸脱していた。
黒の組織で銃の腕前を磨いた。
銃の腕前はかなり良い方だったが、しかし地位はさほど高くなく、安い酒を飲むことしか叶わない。
しかし、ライバル組織から引き抜きにあった。
明らかに好条件だったので、さっさと黒の組織を抜け出した。
そのライバル組織に黒の組織の情報を売ったことにより、組織内では相応な位置に辿りついたのだ。
そんな真っ暗な世界に生きてきた彼だったが、異常な恋をしてしまった。
図書館で一人たたずむ女を見てしまったのだ。
服装次第では少年と間違えるかもしれないが、中性的な見た目の女だった。
可憐だった。
…それからというもの、毎日図書館に通い詰めて女を見つめ続けた。
女の名前は、“安室A”だということも分かった。
そしてついに今日、話しかけたのだ。
あぁ、夢が叶ったのだ、と夢を見るような心地になった。
そして彼女は、男が贈った罠にも気付くこともなく受け取ってしまったのだ。
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作者名:paranoia | 作成日時:2018年5月13日 21時