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苛立ち―4 ページ5

男は今夜、取引をするためにこんな路地裏にいた。


どこからともなく、コツコツと暗い夜に溶け込むような靴の音が響く。



「あなたが取引相手、ですか?
良かった。探す手間が省けました」

目の前の男の声からは殺気らしき物は感じられないと思った男は口を開いた。



「…随分早いんだな。約束の時間まであと30分近くあるっていうのによ」


「居ても経ってもいられなくて、つい」


不意に男の手元を見ると何かが握りしめられていた。
拳銃か!
と思ったがどうやら違うらしい。

よく目を凝らすとトートバッグだった。
彼女と同じトートバッグ。
まぁ、トートバッグ自体珍しいデザインの物ではないが、男の頭に浮かぶのはあの女のことだだった。


「…あぁこのカバン。気になりますか?」


「…いや、それよりも取引だ。
金は用意出来てるんだろうな」


「…えぇ、もちろん」


トートバッグに手を入れる、札束を投げられる。
男は素直に受け取り、USBメモリーをその男に同じように山なりに投げた。


「よし、取引成立だ」


「そうですね。では」


そういうと男の取引相手はトートバッグを投げた。




ガシャン

と、ひどく無機質な音が路地裏に響いた。

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作者名:paranoia | 作成日時:2018年5月13日 21時

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