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苛立ち―2 ページ3

「A、その花どうしたんだ?」

Aのトートバッグをリビングに設置されているソファに置きながら聞くと“あぁ”と短く答えた彼女は困ったように眉を下げた。



『実は今日図書館で知り合った男性に貰ったんです。

…ナンパだろうかと思ったので彼と話さないようにしようと思ったんですけど、無理矢理押し付けられるような形で貰ったんです。

どこかに置いてこようか考えたけど…』



モゴモゴと口をつむんでうつむいた。

…なるほど。彼女の表情が沈んでいたのはコレが原因だったのだろう。


先程彼女のトートバッグを奪いとったように、再び彼女の手の中の物を奪い取る。


「…なら、“コレ”貰って良いか?」


ピッ、と花瓶に生けられている綺麗な花を1挿しだけもち上げる。


驚いたように口を開けていた彼女はすぐに我に戻って“ど、どうぞ”とぎこちなく答えた。









…花を受け取った俺は一度部屋に戻った。

彼女の執筆部屋(と言ってもほとんど本を置くための部屋)を借りた。

Aには仕事をする、と告げた。
彼女は“晩御飯が出来たら呼びますね”と言ってそれ以上言及することはなかった。


…1つ、彼女に嘘をついた。
仕事は一応済ませている。
組織の方の準備は万全であるし、警察庁の報告書は特別急いではいない。


ならば、何故嘘をついたのか。


ジロリと手に握りしめられた花瓶に目をやる。

花瓶に生けられているのは真っ白い花だった。
Aは特に警戒していなかったが、なんとなく分かっていた。

…Aをナンパした男と彼女は初対面ではない。
正確に言うと、男の方が一方的にAを知っている。

それを決定付けているのがこの花と花瓶だ。



今日会ったばかりの初対面の人にいきなり花瓶付きで花をあげるなんて、おかしいにも程がある。
花をあげるだけなら花瓶は必要はない。
花を抜き取り、指で花瓶をノックするように叩くと、違和感があった。



…次に携帯を開き、検索エンジンにこの花の特徴を入れていくと、ある花が引っ掛かった。


…孔雀草。


これで確信した。


…彼は、Aのー。

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作者名:paranoia | 作成日時:2018年5月13日 21時

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