パブロフの禍狗 ページ15
「あの、もしかして迷子ですか？」
スタプロ事務所。
会議を済ませたAをそんな声が呼び止めた。
『そうです！！』
Aは条件反射で答えた。
ESに入社してからの数週間、迷子になりすぎて「迷子ですか？」と聞かれたら『そうです！！』と元気いっぱいに答えるのが癖になっていたのだ。最悪のパブロフの犬である。
が、しかし。自分は別に迷子でも何でもないことを思い出すと、
『違います！！！』
と一際元気いっぱいにそう言った。
数週間前まで迷子になるのは日課だったAだが、天使さんことマヨイに地図をもらってからは自慢じゃないが一度も迷子になったことがない。
本当に自慢じゃない。
そんなわけで、Aは目的地に向かって正しいルートで歩いていた、わけなのだが……
「……？えと、どっちなの？」
『違います！！』
「あ、なら良かった……」
声をかけたのは見覚えのある男性ディレクターだった。彼はまじまじとAを上から下まで眺めると、「あ！」と声を上げた。
「あんた、もしかして星見さん？」
『え？あ、ハイ』
「髪下ろしてたのか！わかんなかったよ。凄い美人がいるものだからモデルの女の子でも迷いこんじゃったのかと思ってね」
驚いた驚いた、と繰り返すディレクターに『はァ』と適当な相槌を打っていた。
彼の言う通り、星見Aは美形である。
首をコテンと傾げて微笑むだけで城一つぐらいなら容易く傾けてしまいそうな、圧倒的な美貌。
「星見が立っていれば例え廃病院でも白薔薇のサロンに見えてくる」なんて言ったのは誰だったか。
彼女自身のメイクの腕前もあるだろう。が、それを抜きにしてもAは容姿にこの上なく恵まれていた。
自分の過去も本当の名前も何も知らず、要領も良いとは言えず、成績も外国語以外はからっきし。
それでも、何も知らない人から見れば星見Aという人間はどこからどう見ても「圧倒的に恵まれた女の子」だった。
……そして、心に余裕のない人間というものは自分より恵まれた人間を許さない。
きっと今回の悲劇はそれ故に起きたのだ。
『あれっ？』
事務所に戻ったAは自分のデスクを見るや否やそんな声を上げた。
『え嘘、あれ……？』
デスクの引き出しを次々と開け、卓上小物入れの中を見、音を立てて鞄を漁る。その動作にはどう見ても焦りが滲んでいた。
「星見さんお疲れ様。えと、どうしたの？」
『……ない』
「え？」
『シュシュがない……！』
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紅鮭(プロフ) - 蘆花さん» 温かいお言葉ありがとうございます！！蘆花さんの琴線に触れたようで何よりです……！石が尽き次第戻ってくるので気長にお待ちください🫶🏻 (3月29日 9時) (
レス) id: cc18d6b067 (このIDを非表示/違反報告)
蘆花(プロフ) - うわぁぁぁぁ…レオくん…レオくんッッッッ！！！もー…レオくん…としか言えない…！素晴らしすぎです！更新、ほどほどに待ってます！ (3月28日 21時) (レス) @page35 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭(プロフ) - らむさん» ありがとうございます！！そう言ってもらえて嬉しいです！頑張ります！ (3月8日 21時) (レス) id: cc18d6b067 (このIDを非表示/違反報告)
らむ(プロフ) - すっごい面白くて引き込まれました…！更新頑張ってください…！ (3月7日 18時) (レス) id: af9a9b1d28 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭(プロフ) - ペネロッペさん» わーっ！コメントありがとうございます！！ペネロッペさんの言葉を励みに頑張ります👊🏻❤️🔥 (1月3日 21時) (レス) id: cc18d6b067 (このIDを非表示/違反報告)
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