あの軌跡を覚えている君と忘れた君 (ページ9)

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温もりページ9

＂急白
　佐野 A 殿

　何故、怪我をしている男の子を
　私の元へ連れて来なかったのですか？
　確かにきちんと処置はされてました。
　しかし、貴方はずっと彼の側に居れますか？
　貴方は一人暮らしですしそれにお忙しい。
　少しくらい信じてください。
　一人で無理する必要などないですから。

　本当に失礼なことを書いてしまい
　申し訳御座いませんでした。

　かしこ胡蝶しのぶ"

　

　余計なことをしてしまったのだろうか…。

　この手紙からは怒りが伝わってくる。

　良心でやったつもりが
　余計にしのぶを傷付けてしまっていないだろうか。

　第一、何故この屋敷にしのぶが。

　取り敢えず清は大丈夫なんだろう。
　きっと、しのぶが。

　俺は思わず涙を一粒流した。
　普段は一人だし、
　任務がない日は鍛錬や此の頃の鬼の分析を。

　暇ではないが
　しのぶ程ではない。
　

　鬼殺と隊士の治療を両立させるのは
　なかなか難しく大変なことだろう。

　女の子が他にも居るが
　それでもだ。

　本当に尊敬するよ。

　この手紙は怒りが本当に伝わる。
　本当に怒っているんだと。

　でもその分、暖かい。
　それを分かってしまう自分が憎い。

　しのぶはすっかり別人のような
　お上品な雰囲気になったが
　中身はまだ完全には変わっていないのだと思って。

　嬉しくて、その手紙が何処か懐かしくも感じた。

　そう思う俺は異常者か…？

　変質者かな。

　今度会った際しのぶに謝ろう。
　感謝を伝えたい。

　そして必ずや清の家族を見つけ出す。
　それが俺の義務のように感じるんだ。

　生きてようが死んでいようが。

　
　どんな形でも会わしてやりたい。