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恐怖 ページ7

『お前は怖くないのか、
  あんたの前にいるのは
 
  間違えなく生きている者を殺した。』


 あの鬼にはこの子は勝てっこない。
 それに勝った俺は尚更、
 この子を殺すことが出来る。


 自分より強い奴が居ることは怖くないのか?

 弱い奴が強い奴に
 殺られるのは当たり前のことだ。



 「いいえ、怖くなどない。
  貴方は強い、
  そしてこんな俺に
  優しく手を差し出してくださった。

  先程は振り払うような真似をしてすみません。」
 

 あのとき以来だ。
 そんなこと言ってくれたのは。

 

 『別に気にするな。
  そんなこと俺は少しも気にしていない。

  あんたは少し怪我が酷いから
  ここで暫く大人しく休め。

  佐野A…。
  俺はそういう者だ。 』


 
 そういえば、
 冨岡から鮭大根を手土産に貰っていたんだっけ。

 今夜はこれにしよう。

 量も沢山あるしな。

 態々温めるのは面倒臭いし、
 冷たいままでも良いか。

 米も朝、握っておいたのがあるしな。



 『すまんが、
  冷たい鮭大根と具無しの握飯でも良いか?
  あまり料理とかはしないから。 』


 そう言って彼の前に晩飯を置いた。
 明日はちゃんと惣菜でも買ってくるか。


 「ありがとうございます。
  本当に申し訳ない。

  俺の名前は清と言います。」



 『お前などの名に興味はない。
  良いからもう食おう。 』

 
 そう言って俺たちは黙々と食べた。
 清の家族はまだ居るのだろうか。


 居たら帰してやりたい。


 きっと心配しているだろう。

 俺にはまだ家族は生きていますか、
 なんか聞ける勇気がないが。



 まだ幼い子供だ、清は。


 生きていようがいなかろうが
 今はただ安心させてやりたい。


 疑問を解くのはその次だ。

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作者名:もち | 作成日時:2024年3月9日 0時

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