26. ページ35
「えっ、な、なんですか！？まだなにか！？」
「あぁ。ちょっとこっちに来てくれ。」
そう言って掴んだ腕を強く引き寄せられ、急にジャミルさんとの距離が近くなる。また至近距離で顔を見てしまい、あまりの顔の良さに思わず目を瞑ると、ジャミルさんは私の首元あたりに手を忍ばせ、何かをした。…何かを取るような動作だった。
意味がわからず目を開けると、ジャミルさんの手には小型の黒いチップのようなものがあった。
「そういえば今朝君にこれを付けたのを忘れてた」
「………え？そ、それは一体…」
「発信器だ。念のため、君に怪しい動きがないか一日中確認させてもらったよ。」
「は…？え？発信器！？」
衝撃すぎて言葉を失った。発信器なんてまず持ってることに驚きだし、付けられたことにも全く気がつかなかった。いつから？こんなところにジャミルさんが発信器を付けられるようなタイミングなんて無かったはずなのに。。。
(……いや、待てよ？)
私は必死で今朝の出来事を思い返していた。ジャミルさんが私の襟元あたりに触れられるタイミング………
それって……
「……三つ編み…の時ですか？」
「なんだ。ぼけっとしてるようで、意外と勘がいいみたいだな。」
「なっ…！！」
「なんだジャミル？？Aとなに話してんだ？」
カリム先輩が背後から顔を覗かせると、ジャミルさんは手に持っていた発信器をさりげなくポケットに入れて隠した。
「なんでもない。いいからお前は早く部屋に戻って勉強しろ」
「えええ〜？なんだよジャミル、つれないな」
「明日小テストがあるのを忘れたのか？お前が赤点だとこっちまで迷惑かかるんだ。」
「…はっ…忘れてた…やばい！まだなにもやってない！！どうしようジャミル！！」
「はー…そんなことだろうと思った。じゃあ俺たちはもう部屋に戻るから、君たちも早く部屋に戻るといい。おやすみ。」
そして、私の耳元で確かにこう言ったのだ。
『人の顔をじろじろ見ている暇があったらもっと警戒しろ』
「え…」
ふっ、と一瞬笑って、ジャミルさんはカリム先輩を半ば引き摺るようにして去って行った。
…数秒の間を置いて、その言葉の意味を理解した。今朝三つ編みをしてもらった時、話を聞かずにちらちらと顔を盗み見ていたことがジャミルさんにバレていたのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リオ - 更新頑張ってください！ (2021年2月27日 14時) (
レス) id: af465deb02 (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白いです！私はカリムとジャミルが大好きです！更新頑張って下さい！ (2020年12月12日 16時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らの | 作成日時：2020年11月8日 19時
