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「…正直、都会の就活舐めてました。散々面接行っても、一社も掠らないし…」
「まあ、地方よりかは倍率圧倒的に高いよな、ここ。Aさんはコッチに上京してきた感じか」
「はい。今通ってるとこが面白そうな大学だったし、東京ってどんなとこなんだろうなっていう好奇心から。田舎より危ないですけど、やっぱ楽しいですね、東京って。でも…」

話を切って、ぬるくなった紅茶を一口飲む。

「…もう、無理に東京で就職するんじゃなくて、大人しく地元に帰って就職しよっかなって。せっかく上京したのに戻るって、勿体無い気はしますけど」

仕方ないですよねえ、なんて笑いながらも胸に湧いたのは、思い出したくない、就活への焦りと諦め、それから絶望。周囲が次々と内定を獲得していく中で取り残される、疎外感。
自分で言い出したくせに少し嫌な気持ちになって、重くなった胸の内を軽くしようと溜息を吐いた。

不意に九井さんが「なあ」と私に呼びかける。何だろう、と思って歩きながら九井さんの顔を見上げた。

「…?どう、」
「そしたら、ウチに就職しないか?」
「へ?」
「オレが働いてる会社。業務が多いのに人がホイホイ辞めてくからさ。人手が欲しいんだ」
「えっ…えっ?」
「業務内容自体は大したことじゃねえんだ。書類の整理とか表の作成とか。でもみんなオレらの顔見て、不愉快そうに辞めてく。だけど、Aさんはそういうの気にしない。変わった価値観を持ってる子だからこそ、ウチに必要だと思う」

いつの間にか、アパートの前まで着いていた。

九井さんはコートのポケットから名刺入れを取り出すと、その中から一枚を抜き、私に渡した。おずおずとそれを受け取る私に、九井さんは優しく笑う。

「オレの名刺。興味があったら、その番号に連絡して。九井一に紹介された者です、って言えば通るようにするから。…待ってる」


それじゃあおやすみ。と言って背を向けて去る九井さんに、私は名刺を握りしめながら小さく「おやすみなさい…」と返すことしかできなかった。

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Kyoro丸。(プロフ) - 超面白いですね(笑)主人公の性格が癖強くて好きです(笑) (2023年2月11日 13時) (レス) @page13 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
icchy(プロフ) - はじめまして!めっちゃおもしろくてハマりました✨是非どんどん続編期待してます!! (2023年1月9日 21時) (レス) id: 1c7a9fb991 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怪人百面相 | 作成日時:2023年1月6日 15時

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