"仲間" ページ27
あまりにも唐突な拳に、受け身をとれずに軽く宙に浮いた体。
「いい加減にしろィ」
いつもの沖田隊長からは予想もできない低い声に思わず目を見開いた。
「テメーが土方の命令を無視しようが知ったこっちゃねェ。でも、テメーは一番隊の隊士でィ」
赤い瞳がギラリとひかり、久しぶりに恐怖を感じた。
背中から這い上がってくる悪寒。
そして、一度目があってしまえば逸らせない瞳。
「一人で突っ込んでいくんじゃねェ。いくらテメーが強かろうが、戦場に絶対はねェんだぞ」
沖田隊長はそのまま目をフッと逸らして最後に呟くように言った。
「なんのための仲間でィ」
沖田隊長が立ち上がり、局長室を出て行けば土方さんや近藤さんも席を外した。
重々しい空気とともに、取り残されたのは私とザキさん。
「・・絶対なんですよ、私の戦場は」
ズキズキと痛む殴られた頬。
物理的な痛みなんて久しぶりだ。
触れてもわかるくらい、その頬は腫れあがっている。きっと、酷い顔なんだろう。
「大丈夫?」
その場から動けずに居ると、降ってくるように聞こえた優しい声音。
顔を上げればザキさんが保冷材を手に私の隣に座った。
「冷やさないと治りにくくなっちゃうよ」
「・・ありがとうございます」
ザキさんの言うことすら聞かなかったのに、優しく接してくれるザキさんに心がチクリと痛む。
しかし、ザキさんは気にするなと言わんばかりに言葉を紡いだ。
「沖田隊長はね、ああ見えて真選組のなかでも一番、仲間思いなんだ」
「沖田隊長が、ですか?」
「こんなこと聞かれたら隊長に怒られるかもしれないけど、あの人は一番仲間のことを考えてる。だから、一番隊隊長を引き受けてるんだ」
――自分が先頭をきれば、後に続く仲間を守ることができる。
「私も仲間、なんですね」
「当たり前じゃないか!」
"仲間"
たった二文字程度の、すぐに壊れて行ってしまいそうなもろい物。
だけどそれは多分、ずっと私の求めていたものだ。
「っ、・・ぅッ」
「ちょ!?Aちゃん!?なんで泣いてんの!?そんなに痛い!?」
「ちがッくて、・・わたしッ」
胸に広がって言った言葉にポツリポツリと流れていく涙。
山崎さんはあたふたしながらハンカチを手渡してくれた。
「わたし、沖田隊長にッ・・謝ってきますっ!!」
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神阿(プロフ) - ☆MARIN☆さん» ありがとうございます!!がんばります!!! (2016年6月15日 20時) (レス) id: d25d67767d (このIDを非表示/違反報告)
神阿(プロフ) - 銀色ミカンさん» お返事遅れてしまってすみませんでした!勿体ないお言葉ありがとうございます!!がんばります!! (2016年6月15日 20時) (レス) id: d25d67767d (このIDを非表示/違反報告)
☆MARIN☆ - な、何かドキドキする展開になって来ましたね……! 更新頑張って下さい!! (2016年6月15日 17時) (レス) id: 8824379efa (このIDを非表示/違反報告)
銀色ミカン - お初にお目にかかります。この展開、めっちゃいい^^面白いです^^続きを楽しみにしています。がんばってください。 (2016年6月13日 15時) (レス) id: 220d4c1752 (このIDを非表示/違反報告)
神阿(プロフ) - 奈々恵さん» ありがとうございます!話の内容はもう既に決定しておりますので暫しお待ちを! (2016年5月22日 17時) (レス) id: 3a209594c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神阿 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kamiamatome/
作成日時:2016年5月1日 21時