百六話 ページ6
〜福沢〜
福沢「春野くん。すまないがAがここに来るのを止めてくれるか」
春野「は、はい」
福沢「それで?貴女はこれを届けに来ただけか?」
紗奈衣「もちろん。本当は本人が来たかったみたいなんですけど、あの人は繊細なもので。ここ最近、ずっと吐いてるんですよ」
福沢「は……?いや、それは大丈夫なのか」
紗奈衣「あはは!優しいですね。会ったこともない、どんな人間かも分からない人を心配するなんて」
福沢「悪いか?」
紗奈衣「いえ。だからきっとAちゃんは貴方を好いているんでしょうね。あ、その招待状。福沢氏以外は来てはいけませんよ」
森「我々がいると何か困るんですか」
紗奈衣「言ったでしょう。臆病で小心者で繊細だと。他の人がいたら姿さえ現さないと思いますよ」
福沢「それ故、探偵社には出向けないと」
紗奈衣「話しが早くて助かります。もちろん、来て頂けますよね福沢氏」
福沢「私も色々と聞きたいことがあるのでな。行かせてもらう」
紗奈衣「Aちゃんも連れて来て下さいね。おひげのおじちゃんが待ってるって言えば来たがると思うので」
乱歩「ねぇ。一つだけいい」
紗奈衣「どうぞ」
乱歩「おひげのおじちゃんに伝えておいてくれる。貴方の判断は正しいのかもしれない。でも、間違っていた、ってね」
紗奈衣「はい。しっかりと伝えておきます。世界一の名探偵さん」
乱歩は全てを分かってしまった
その上で何も話そうとしない
第三者からではなく、直接本人から聞くべきだと判断したのなら、そうするのがベスト
「しゃちょ?どうしたの」
相手はAも指名してきている
誘わない訳にはいかない
福沢「A。おひげのおじちゃんに会いたいか」
「会えるの!?」
こんなにも嬉しそうに笑うのか
眩しすぎる笑顔に、連れて行きたくないと思った
「国木田。パン」
一枚だけ受け取り、それをちぎっては一口だけ食べて案の定、残りは私達で食すことになった
敦「ところで、国木田さんのパンってどういう意味ですか」
太宰「Aちゃんにとってパンというものはね、固かったりカビが生えてたり、残飯…残パンのことを指してたんだ。で、間違った知識を正すために国木田くんが知り合いのパン職人に出来たてフワフワのパンを焼いてもらったというわけさ」
敦「だから国木田さんのパン」
太宰「ちなみにこのパン。毎日行列を作る店の人気食パンなんだよ」
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作者名:まゆ | 作成日時:2024年2月9日 21時