百四話 ページ4
〜福沢〜
国木田「俺のせいですまなかった!!」
翌々日、Aと出社すると入り口で正座をしていた国木田が床に頭をぶつける勢い、というか完全にぶつけながら土下座をしていた
突然すぎる出来事に流石のAも私の足に隠れた
国木田「俺がもっと情報を仕入れていればあんな事態にAを巻き込まずに済んだ」
声から後悔が感じ取れる
「国木田。見て」
ゆっくりと頭を上げた国木田の額は赤くなっている
「与謝野が治してくれた。だから、怪我してないよ」
国木田「いや、しかし……怖い目に合わせた。それは紛れもない事実だ」
福沢「A。国木田はケジメをつけたいのだ」
「ケジメ?」
福沢「あぁ。何か国木田にして欲しいことはあるか」
「んと……国木田のパンが食べたい」
国木田「パンだな。分かった。すぐに買ってくる!」
速いな。もう見えなくなった
国木田と入れ違いに、息を切らせた特務課の坂口安吾が入ってきた
心做しか顔色が悪い
安吾「太宰くんから連絡をもらって。無事で良かった……!!」
「与謝野が治してくれたの」
安吾「はい。聞いています。それで、あの……不躾なお願いで申し訳ないのですが、抱きしめてもいいですか?」
その願いとやらは、Aではなく私に確認をしていた
種田「まぁ、そう怒るな」
福沢「種田先生までいらっしゃったのですか」
種田「Aの危機には駆け付けてやれんかったからな。ほれ、快気祝いの品だ」
福沢「ありがとうございます」
種田「坂口はな、Aが襲われ、喋れなくなったと聞いてから、今まで寝込んでいたんだ。働きすぎが原因の自業自得ではあるがな。それほどまでにAを大切に想っているという証拠だ」
福沢「A。嫌なら断ってもいい」
あくまでも、決めるのはA
「いいよ」
大きく息を吸い、気持ちを落ち着かせてから、慎重に、まずは頬に触れ、その後に背中に手を回した
その行動だけで、いかにAを想ってくれているのかよく分かる
「安吾。疲れてる?お風呂、ダメだった?」
安吾「いいえ。とても素晴らしい効能でしたよ」
二人は……一体いつまで抱き合っているつもりだ?
自分の心の狭さを痛感する
太宰「社長。私も」
福沢「却下する」
太宰「まだ何も言ってませんが?」
福沢「純粋無垢な幼子を自死に誘う輩に、本気で許可が出ると思ったのか。私がそこまで優しくないのは、重々承知だろう」
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作者名:まゆ | 作成日時:2024年2月9日 21時