百三話 ページ3
〜福沢〜
昨日、国木田に休むと連絡をしたため翌日に出社するのは気まづかった
そのため翌日、つまりは今日は休むことにした
「お仕事行かない?」
福沢「私と二人で過ごすのは嫌か?」
「ううん。やじゃない」
猫のパジャマを着たまま抱きつかれると、可愛くて仕方がない
見た目にはいつも通りだ
だが、心を閉ざしたAは明らかに、弊害が伴っている
福沢「どうした?」
「水、飲んでくる」
福沢「風呂の湯は抜いているぞ」
「んぅ……?」
Aの中で全て……いや、一部がリセットされてしまった
福沢「喉が乾いたのなら、ジュースを飲むか?」
「ジュース?飲む」
Aを一人残して置くのは危険で、抱き上げて台所へと向かう
赤子が手当り次第、物を口に入れるのと同じ理屈
分かっていないのだ、Aは
なぜ、それをしてはいけないのか
それはAが育った環境のせい
人ならざる生活を強いられてきた結果
しまった。買い置きのジュースが切れている
いや、丁度いい
福沢「A。少し出掛けるのだが、一緒に行こう」
「??A、邪魔じゃない?」
キョトンと首を傾げた
外に出ることさえ許されなかったのか
福沢「Aと一緒がいいのだ」
「着替えてくる」
嬉しそうに笑顔が輝く
言葉を間違えればAを傷付ける
慎重に選ばなければ
「お待たせ」
フィッツジェラルド殿から貰った一式はボロボロで着られなくなったため、前に着ていたピンクのコートを羽織る
あんなことがあっても、Aは特に人を怖がる様子はない
「どこ行く?」
福沢「まずはジュースを買おう」
Aはお気に入りのジュースはなく、いつも気分で選ぶが炭酸だけは好まない
「これ」
お金を入れて、ボタンをAに押してもらう
ペットボトルの蓋を開けられないAは、じっと私を見る
たまに意地悪をして見つめ返すときもあるが、今日のところは素直に開ける
Aがジュースを飲むのに夢中になっている間に、目当ての店に急ぐ
看板は出ていなが扉に鍵はかかっていない
中に入れば小柄な中年女性が笑顔で出迎えてくれる
目の前のガラステーブルに品物を置いて
「下賜!!」
彼女は異能者だ
どんな壊れた物も完璧に治してしまう
壊れ方によもるが、大体は三日もあれば治る
福沢「あぁ、やはりよく似合っている」
代金を払い、髪飾りをAに付けると一気に上機嫌になった
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作者名:まゆ | 作成日時:2024年2月9日 21時