百一話 ページ1
〜福沢〜
福沢「和田医師!至急、Aを診て頂きたい」
医師「ふ、福沢さん?どうし……Aちゃん?」
与謝野くんの異能で完全に治り切っていることは分かっている
私が診て欲しいのはAの精神、心だ
どれだけ非常識なことをしているか分かっている
分かってはいるが、私はAを優先したい
私の不躾な態度に、急を要することが伝わり、担当の患者を他の医師に任せ、人払いをした診察室を開けてくれた
何があったのか、出来る限りのことを話した
医師「普通、虐待を受けていた子供は自身を守るため、新たな自分を作り出したりします。解離性同一性障害、
福沢「Aは、また笑えるように……」
医師「絶対に、とは言えませんが。福沢さん。沢山話しかけて下さい。今のAちゃんには福沢さんの声は聞こえても、届いてはいません。だからこそ、ここにいていいんだと、何も我慢しなくていいんだと、教えてあげて下さい」
福沢「はい。ありがとう……ございます」
Aと二人、家に帰り着くも、何の反応も示さない
部屋にAを下ろすと、初めて動いた
隅に移動して膝を抱えて小さく座る
福沢「A。こっちにおいで」
声をかけても無反応
そうか。今、目の前にいるのは出会った頃のAではなく、私と出会う前のAなのか
親の
大人しいAを一人にしておくことは安心だが、不安も残る
猫のぬいぐるみを手に持たせても興味を持たない
この状態のAでは満足に食事も採れないだろう
あとは私がAを一人にしたくなくて、手軽な粥を作った
膝の上に乗せて、冷ました粥を口元に運ぶも食べようとはしてくれない
福沢「A。一口でいい。食べてはくれないか?」
栄養を補うだけなら点滴でもいいのだが、それではずっと病院に閉じ込めることになる
このまま捨ててしまうのももったいなく、粥を食べ切った
福沢「風呂に行こう」
傷を見なければ冷静でいられる
今日はシャワーだけで済ませるとするか
脱衣場で服を脱がせて、動かないAを洗うのは容易かった
福沢「A。少しだけ目を閉じてくれるか」
このまま髪を洗えば流すときに目に沁みてしまう
私の声は聞こえているが届いてない、か
全くその通りだな
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作者名:まゆ | 作成日時:2024年2月9日 21時