【文スト】猫ト眼鏡ト心中ト、素敵帽子ト白い虎【短編集】 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:11,216 hit

キスマークと甘い痺れと帽子君中原中也ページ4

｢うぅ…痒い…｣

首筋にできた赤い凸。

そう、この季節特有の小さな吸血鬼…蚊にやられたのだ。

放って置くと掻いて肌を傷付けてしまうのでいつも絆創膏でカバーしている。それにしても痒い。

｢…あっ、中也！｣

少し向こうに愛しい人を見つけ、嬉しくて駆け寄って行く。

あちらも私に気付いたようで笑顔で手を振ってくれた。

が、次の瞬間、何故かその笑顔が固まり鬼の形相で近付いてきて。

私の手をパシッと掴む。

｢あ、あの…中也？どうした…痛っ!?｣

ベリっと乱暴に首の絆創膏を剥がされた。

｢…手前、これ誰に付けられたんだ？｣

｢え？｣

凄い形相で睨みつけて来る彼に、何事かわからない私は唯々戸惑ってしまう。

｢っ、手前！とぼけんな!!このキスマークは誰につけられたのかって聴いてんだよ!!!｣

首筋をちゅうっと吸い上げられ、｢ひあ、｣と変な声が漏れてしまう。

｢ちょ、中也！違うから！只の虫刺さ…っん!?｣

やっと彼が蚊に刺された蹟をキスマークと勘違いしていると気付き誤解を解こうとしたが、彼の唇で言葉を塞がれてしまう。

｢…っ…ちゅ、や…っ!｣

急な激しい口付けに、意識までぐちゃぐちゃに掻き乱され思考が停止していく。

｢…っはぁ…はぁ…｣

解放された時には、もう思考も何も溶け切っていて。
身体も頭も甘い痺れに支配されていた。

｢…誰にやられたか言うまで、ぜってー放してやんねぇから｣

そう嘲笑気味に口角を上げる彼を、不覚にも恰好いいと思ってしまう。

＿＿＿

｢…莫迦、阿呆、変態、チビ!!!!虫刺されって言ったのにっ!!!!｣

｢だからそれは悪かったって!!
…でも手前だって気持ちよかったろ？｣

｢～～ッ莫迦!!!莫迦莫迦!!!本ッ当にデリカシーのない!!!｣