第5話 少女 ページ6
僕には、昔、友達がいた。
其の子は、僕と同い年の、昔孤児院で出会った、僕と同じ境遇の女の子。
僕達は、何時も一緒にいた。
でも、其の子は──死んだ。
遺体は見つかってない。
そもそも見付けられる訳がない。
“海に落ちた人間の遺体”なんて。
でも、僕は思うんだ。
『彼女は生きてる』って。
何の確証も根拠もない自信。
屹度此れは、虎の本能が言っているのだ。
僕は探偵社に入社して、僕は仕事の空いた時間に彼女を探している。
けれど早々見付かる訳がなく。
でも、其れでも僕は、彼女の足跡を見付け出そうと探している。
どんなに時間が掛かろうと、構わない。
最終的に、“彼女と再会”っていうハッピーエンドがあるならば。其の為なら僕は、手段だって選ばない心算だ。
だって、
君との“約束”があるでしょ?
昔、指切りげんまんして……約束したね。
君さ、「絶対、約束だよ」って言ったよね。
うん、大丈夫だよ。
僕は、絶対に破らない。
ねえ、だから絶対に君も待っていてね。
僕が必ず、君を迎えに行くから。
そしたらさ……僕、したい事が沢山あるんだぁ。
本当、早く君に会いたいな。
「──……し、……あ………し……、敦!」
「はいッ!」
いきなり大声で自身の名前を呼ばれ、反射的に肩がびくっと跳ねた。
「お前、何度も呼んでいたのだぞ! 全く……先刻頼んだ資料は終わったのか?」
横を向けば、何時の間にやら苛々した様子の国木田さんが座った侭の僕を見下ろしていて。
「す、済みません……まだです」
「其の資料は早めにと言っただろう。呆けている暇などあるなら手を動かせ」
「はい、判りました」
すると国木田さんは踵を返し、自身の執務机に戻っていった。
「……ふぅ、」
「珍しいねえ」
「え?」
横を向けば、太宰さんが珈琲を両手に僕を見下ろしていた。
太宰ブレンドだよ、国木田君に怒られた敦君に特別に、とにこりと口角を上げて僕の机にコトっと置いた。
太宰さんが僕の隣の席につくと、珈琲を一口、口に含んで、
「敦君が、執務中に考え事なんて」
「すみません、仕事中なのに、ぼーっとしちゃって」
僕が苦笑をすると、太宰さんはすっと目を細めた。
「別に良いのだよ、私は責めてる訳じゃ無いのだから。其れに──君が探してる子の事を考えていたのだろう?」
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叶葉和音 - 鏡さん» コメント返し、大変遅くなってしまい、すみません!応援ありがとうございます!更新は不定期ですが、頑張らせて頂きます! (2017年2月25日 12時) (レス) id: c4535f63fb (このIDを非表示/違反報告)
鏡 - 続きがとっても気になります!これからも頑張って下さい!応援してます!! (2016年12月8日 17時) (レス) id: 4c3e184e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:叶葉和音 | 作成日時:2016年12月5日 1時