第3話 仕事終わり ページ4
奥には、パン屋の厨房、と言えば判りやすいだろうか、一寸したスペースがあり、其処で木製の椅子に腰を下ろして、机に向かい店長は先にも言った様に会計仕事をしているのだ。
「店長、そろそろ閉めますか」
其の小部屋の開いた扉から顔を覗かせて、未だに会計仕事をしている店長に聞く。すると店長は頭を上げた。
「そうだねえ、そうしますかのお。ああ、店の前の花は……」
「店の中へ入れました」
「そうかい。儂(わし)はまだ仕事が残っとるから、先に帰りなさい。お疲れ様」
「はい、お疲れ様でした。では失礼します」
にっこり人の良い笑みを浮かべる店長にぺこりと頭を下げて、私は帰る準備をし、店を出た。
空を仰げば、絵の具で塗り潰したかの様に、ムラのない藍色の空が広がっていた。雲一つ無い其の空を見た侭、
「……今日は冷えるな」
腕を組んで両方の二の腕を寒そうに撫で、目を伏せた。
はあ、と息を吐く度に、吐息は白く染まっては直ぐ消えた。
「本当寒いな……」
悴(かじか)む手に息を吹き掛けるが、一向に温まらない。寒さに震える。
もっと厚着して来れば良かったな。
「……あ、今日の夕飯何にしようかな」
今日は寒いから、シチューにしようか。其れともポトフ? 鍋も捨てがたい。
頭の中にぽんぽんと、豊かな温かい料理達が浮かぶ。
顎に手を当て唸り乍ら、私はスーパーへと向かった。
*
結局其の日は、野菜やウィンナーがお買い得だったのでポトフを作った。
ポトフの素も買ったので、迚も簡単に美味しく作れた。
そして今私は、湯舟に浸かっている。
浴室はもくもくと湯気が立ち上っている。
「はー……気持ちー……」
今日分の疲れが吹っ飛ぶ……。
浴槽の中で、ぐっと伸びをする。ざぱあ、と水面が波打つ。
「……、はあ……」
私は今日頭に浮かんだ人の、あの人を思い溜め息を附いた。
銀色の髪の少年。
其の子は私が幼い頃に知り合った、孤児院の子。
私はまだ小さい頃、孤児院にいた。其れは其れは寒い雪の中、孤児院の門の前に、まるで捨て猫の様に捨てられていたそうだ。
其れは、其の銀色の髪の少年も同じだった様で、共通点のあって、同い年だった私達は、直ぐ仲良くなった。
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叶葉和音 - 鏡さん» コメント返し、大変遅くなってしまい、すみません!応援ありがとうございます!更新は不定期ですが、頑張らせて頂きます! (2017年2月25日 12時) (レス) id: c4535f63fb (このIDを非表示/違反報告)
鏡 - 続きがとっても気になります!これからも頑張って下さい!応援してます!! (2016年12月8日 17時) (レス) id: 4c3e184e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:叶葉和音 | 作成日時:2016年12月5日 1時