9・状況一転/関係悪化 ページ10
どうしてこうなったんだろう。
手足を拘束する羅生門と、冷たい無表情で私を見下ろす同僚に呪詛を紡ぎながら自問自答する。
否、これは私の浅はかさと愚かさ。それから今も昔も変わらない元上司の悪徳極まる所業が招いた最悪な絵面だ。
──本当に、あの時殺しておけば良かった。
先刻までのそこはかとなく漂う懐かしい雰囲気は何処へやら。身の危険を感じさせる雰囲気の中、遅すぎる後悔を噛み締める。
通常、私の拳銃嚢に納められている二挺拳銃は床へ転がり。……あれ古い型なんだから乱暴に扱うんじゃないわよ。
そして手足は陽炎のように揺らめく羅生門に絡め取られ。因みに現在地は先程の廊下に並ぶ扉の一つ。第二資料庫である。
資料の劣化を防ぐ為に必要最低限に落とされた照明の下。
固唾を飲んでそいつの言葉を待つ。
「お前の"ソレ"……何処の輩に付けられた」
沈黙を破った声。──ああ、やっぱりそのことか。
大方、予想はついていた。ソレとは私の首筋にある赤く色付いた"ソレ"だろう。……恐らくは太宰さんが付けた方の。
それでも態々こいつを刺激するような名前を出す必要はない。私は秘匿の方向性を心に決める。
「……別に」
睫毛を伏せて目線を逸らす。と、その瞬間に手首に痛みが走り抜けた。ぎち、なんて音を立てて拘束する力が強まる。
「……云え」
表情に不機嫌さを滲ませながらそいつが云う。相当苛立ちが募っているのか私を射抜く視線は冷たく、鋭い。
私はそんな芥川を睨み返した。
「アンタには関係ないでしょ」
語気を強めて云った途端、ワイシャツの襟元を乱暴に掴まれた。そのまま勢いよくそいつの方向へと引き寄せられる。私の身体は意思に反し、倒れ込むように重力に従った。
吸い寄せられるように唇が重なる。
しかしそれは直ぐに私の中の酸素を根刮ぎ奪い尽くす深い、甘美な拷問に変わる。手足の自由が効かない今、私にやれる抵抗は情けないことに身を捩るだけ。
それも後頭部に差し込まれた手により無駄な抵抗となる。
「んんっ……ふ、あ……っ……ん」
舌が絡み、余りにも深いそれに意識に霞みが掛かる。気が付いた時には資料庫の床に息絶え絶えにへたり込んでいた。
目線を上げれば、へたり込んでこそはいないもの、流石に息は切れたらしく呼吸の荒いそいつと目が合う。
交錯する、非友好的な剣呑な視線。
「……太宰さんか」
そいつの言葉に、目を見開いた。
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まかろん - いつになったら続きだすんですか? (2022年3月3日 18時) (レス) @page38 id: e90d3fb299 (このIDを非表示/違反報告)
村越 - 続き……続きが読みたいです!待ってます!! (2018年12月31日 1時) (レス) id: 221d19ed47 (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - 茉莉(まつり)さん» ありがとうございます!私の書く文章から、そう云った感想を頂けるのは正に感無量です。伝えたいことをちゃんと拾って下さっているんだな、と思います。滞り気味ですが……どうか最後まで御贔屓ください! (2018年7月24日 23時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
茉莉(まつり) - 何か無償に泣ける…更新がんばってください、楽しみにしてます…! (2018年7月21日 10時) (レス) id: 5299f2ee2b (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - デミオムさん» コメントありがとうございます!私は今年受験生なのですが、そんな温かいコメントにいつも遣る気を分けて頂いています!この作品もあと少しで完結です!最後まで御贔屓ください! (2018年5月21日 21時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なをりん | 作成日時:2017年7月12日 18時