33・莫迦な娘/殺意 ページ36
組合の伊留満との死闘を終え、船舶の内部を歩く。梶井の爆破により大部分が剥落し、所々が燻る巨大な炭と化した船舶。
それでもその巨大さ故か主な被害は甲板とその階下にしか及んでいない。
無論、如何に船が無事だろうと、其処に居るた構成員は皆、物言わぬ骸として転がっている。
ふと微かな吐息の音が耳を掠めた。──此所か。
万が一にも脱出されぬよう、船舶の最深部に連れ込まれたのだろう。爆発の痕跡が殆ど見受けられない船室の前で足を止める。
「──……愚者が」
吐き捨てるように呟くその先には、見慣れた姿が力無く壁に凭れ掛かっていた。
爆発の衝撃か、それとも衣服を赤く染め上げている出血が多過ぎたのか、或いは両者か。その瞼は閉じられ、睫毛が白い肌に色濃く影を落としている。
恐らくは淫欲剤の類いでも盛られたのだろう。
意識の無い今でもその吐息は艶やかに濡れ、僅かに火照りを残す肌はしっとりと汗ばんでいた。
扇情的なその様に、思わず舌打ちが洩れた。
──目の前の憎たらしい小娘が、何処の誰とも知らぬ輩にこの無様な乱れようを晒した。
それだけで胸の内で何かが粘度を増し、此奴(こいつ)を直ぐにでも殺して仕舞いたくなる。幾度と無く繰り返してきた情動だ。
自分より後に彼の人に連れられ、マフィアに加入した生意気な娘。異能も秀でた技も持たない癖に僕に食って掛かる生意気な娘。
──こんな小娘など、何時でも殺せる。
──だからまだ殺さずとも良い。
──そう。何時でも殺せるのだから。
呑気に気を失っているそいつの首に指を掛けてみる。微かに指先に力を込めた。柔らかい肌が軽く圧迫され、妙な刺激でも与えてしまったのか、その唇から一際濡れた吐息が零れた。
「……莫迦な娘だ」
辟易としつつもそしてそれ以上、力を込める事なく指を離す。
代わりに何処までも目障りで腹立たしい女の首に、血が出る程に強く印を付けてやった。
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まかろん - いつになったら続きだすんですか? (2022年3月3日 18時) (レス) @page38 id: e90d3fb299 (このIDを非表示/違反報告)
村越 - 続き……続きが読みたいです!待ってます!! (2018年12月31日 1時) (レス) id: 221d19ed47 (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - 茉莉(まつり)さん» ありがとうございます!私の書く文章から、そう云った感想を頂けるのは正に感無量です。伝えたいことをちゃんと拾って下さっているんだな、と思います。滞り気味ですが……どうか最後まで御贔屓ください! (2018年7月24日 23時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
茉莉(まつり) - 何か無償に泣ける…更新がんばってください、楽しみにしてます…! (2018年7月21日 10時) (レス) id: 5299f2ee2b (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - デミオムさん» コメントありがとうございます!私は今年受験生なのですが、そんな温かいコメントにいつも遣る気を分けて頂いています!この作品もあと少しで完結です!最後まで御贔屓ください! (2018年5月21日 21時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なをりん | 作成日時:2017年7月12日 18時