1・明くる日/寝坊 ページ2
──紅茶の匂い。
ふと鼻孔をくすぐる佳い香りに、意識がまどろみから浮上する。……この香りはアッサムだろうか?
「ん、ぅ……」
目を開けると、清々しい朝日と白いシーツが視界に入った。未だ眠気を引きずったまま、ずるずると重い身体を起こして欠伸をする。
「ようやく起きたか」
突然背後から聞こえた声にびくりと肩を跳ね上がらせ、勢いよく振り返った。……そして激しく後悔した。
「痛っ……ぁ」
頭と腰に鋭い痛みが走る。主に腰に。思わずベッドの上で悶絶する。
するとソファで優雅に紅茶を飲んでいた男──芥川龍之介がカップをソーサーに戻し、剣呑な目で私を見た。
「随分と遅いお目覚めだったな。まさか僕より二時間も遅く起きるとは」
「あ、芥川……っ」
「目の前ではしたない姿で眠りこけられると紅茶が不味くなる。そのシャツは洗って銀に返しておけ」
そう云われて初めて自分の格好を見下ろす。薄っぺらいワイシャツ一枚。うっすらと肌の色が透けている。
当然だけど下着も着けていない。こいつ、勝手に……っ
「それならシーツでも何でも掛けてくれればいいじゃない!何もわざわざ……き、着替えっ」
羞恥で顔が火照るのを感じる。しかしこの男は涼しい顔を崩さない。
「それだけだと風邪を引くだろう。任務で足を引っ張られるのは御免だ」
「〜〜〜っ」
睨み付ける私を他所に、そいつは紅茶を飲み干した。傍らに掛けてあった外套を手に取り、ポケットなら何かを取り出して私に投げる。
慌てて掴むと、それは鍵だった。
「僕はもう出る。戸締まりはしておけ。……ああ、それと」
そいつは寝室の扉に手を掛けて、一端言葉を切ると、私を振り返った。
最高に意地の悪い、腹立つ笑顔で。
「昨夜は中々に楽しかった。──ではな」
ベッドの上でへたり込んでいる私を前に、扉がバタンと閉じる。
……楽しかったですってぇ?私は最悪の気分だったわよ!指先一つで散々弄ばれて、此方はどれだけ屈辱だったか!!
悔しくて堪らない。
結局昨日もあの男のお遊びに良いように使われただけで。嫌で嫌で仕方のない筈なのに、快楽に溺れた自分が情けない。意思に反して熱を持った躯が気持ち悪い。
……でも、あんたには絶対に敗けない。
最後に勝つのは私だってこと、忘れないでよね──芥川龍之介。
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まかろん - いつになったら続きだすんですか? (2022年3月3日 18時) (レス) @page38 id: e90d3fb299 (このIDを非表示/違反報告)
村越 - 続き……続きが読みたいです!待ってます!! (2018年12月31日 1時) (レス) id: 221d19ed47 (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - 茉莉(まつり)さん» ありがとうございます!私の書く文章から、そう云った感想を頂けるのは正に感無量です。伝えたいことをちゃんと拾って下さっているんだな、と思います。滞り気味ですが……どうか最後まで御贔屓ください! (2018年7月24日 23時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
茉莉(まつり) - 何か無償に泣ける…更新がんばってください、楽しみにしてます…! (2018年7月21日 10時) (レス) id: 5299f2ee2b (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - デミオムさん» コメントありがとうございます!私は今年受験生なのですが、そんな温かいコメントにいつも遣る気を分けて頂いています!この作品もあと少しで完結です!最後まで御贔屓ください! (2018年5月21日 21時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なをりん | 作成日時:2017年7月12日 18時